ビルが買ってくれた緑のロゼットを付けて貴賓席に向かう。
競技場の広さに呆然としていた私にチームの事をビルが教えてくれる。
熱心にクィディッチの事を見ている訳ではない私はビルの説明が一番解りやすい。
チャーリーや双子に聞くと事細かに教えてくれるので覚えきれないのだ。
挙げ句相手のチームがどう、あの選手の癖がどうという話になるので余計解らなくなる。


貴賓席の隅っこに並んで競技場を見渡して私は圧倒された。
外から見た時も思ったけれど、かなり広くて大きい。
広告を見たり、プログラムを見たりとにかく驚きが一杯だった。
隣でビルがクスクスと笑っているのに私も意味もなく笑えてしまう。


プログラムのページを捲ろうとしたらいきなりビルに手を掴まれて背中に引き寄せられる。
何事かと思ってビルが見ている方を見ようと思ってもビルの背中で何も見えない。


「ビル、どうしたの?」

「マルフォイだ」


ビルの言葉にこっそり其方を見るとマルフォイ家の三人が見えた。
どうやらマルフォイさんとファッジ大臣と話をしているらしい。
私はアーサーさんから一番離れているので内容は全く聞こえなかった。
ただ、フローリシュ・アンド・ブロッツの事を思い出すと良い内容ではないだろう。


ドラコが私に気付いたのでこっそり手を振ると片眉を上げた。
前も思ったけれどマルフォイさんはやっぱり好きになれそうにない。
マルフォイ夫人はドラコを大事そうにしているのを何回か見た事はあるけれど、恐らく純血主義なのだろう。
そのうちマルフォイ家の三人は自分の席へと進んでいった。


「もう大丈夫。腕、痛くなかった?」

「うん、大丈夫」

「良かった。名前にあの言葉は聞かせたくないからね」


ビルの手が頭を撫でたのとほぼ同時に大きな声が響く。
マスコットのヴィーラが出てきた瞬間私は慌ててビルの耳に手を伸ばした。
本物を見るのは初めてだけれど、外見はただ綺麗な女の人。
ビルは大丈夫だというように私を撫でた。
アイルランドのレプラコーンを見ているとフリットウィック先生を思い出す。
歓声が響く中ビルになんとかそう言うと血を引いているんだと教えてくれた。


試合はやはり詳しい事はよく解らないけれど、ホグワーツなんか比べ物にならない。
とにかく選手の動きが早くて私はチェイサーを追いかけるので精一杯だった。
得点したり反則を受けたりすると観客席から歓声が起こって揺れる。
とにかく凄い歓声で解説を聞くのでさえやっとだ。


「最高だ!見ろよ相棒!」


フレッドの叫ぶ声が聞こえて今度はビーターを追いかける事にした。
狙いが的確で、そしてかなりパワーがあるように見える。
ビクトール・クラムの顔に当たった時は思わずビルの手を握った。
ブラッジャーが当たっただなんて、骨折してもおかしくない。


「アイルランドの勝ち!」


そう叫ぶ声がしてアイルランド側が爆発した。
自分の声さえ聞こえない状況の中、ビルとハイタッチをする。
ビルが笑顔で何か言ったけれど、聞こえなかった。




(20121202)
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