緊張状態で朝食を食べながらモリーさんと話しているとビルとチャーリーが降りてきた。
二人とも緊張状態の私を見て苦笑いを浮かべる。
テストで合格してから初めて今日姿現しをするのだ。
二人に代わる代わる頭を撫でられても私の緊張は解けない。
「名前ったら全然駄目なのよ。二人で元気付けてあげて頂戴」
モリーさんに言われたからか私を挟んでオートミールを食べ始める二人。
さっきから一向に減らない私のお皿と同じ量になるのに時間はかからないだろう。
「そんなに緊張しなくても大丈夫だよ」
「そうそう。俺と違って一回で合格したんだろ?」
「チャーリー、一回じゃないの?」
「ああ。だから自信持て」
微笑む二人を交互に見て少しだけ食欲が出てきた。
二人にお礼を言うとまた代わる代わる頭を撫でられる。
半分程食べた時、バシンと音がしてパーシーが爽やかに朝の挨拶をした。
「全く、これだからパースは」
溜息混じりにビルが言った言葉にパーシーは首を傾げる。
チャーリーが笑い始めたので訳が解らないと眉を寄せた。
庭に出てモリーさんの励ましを受けて私は息を吐く。
心配そうなビルとチャーリーに挟まれて煩い心臓と戦っている。
大丈夫、と頷いて私はビルと同じタイミングで姿くらましをした。
姿現しをするとそこは森で、横を見ればビルが笑顔を向けている。
「名前、ちゃんと出来たじゃないか」
頭をぽんぽんと軽く叩かれながらなんとか頷く。
後から来たチャーリーとパーシーにもぽんぽんと叩かれた。
アーサーさん達と合流するとちょうど昼食で、いち早くチャーリーに座らされる。
ビルが隣に座ると競うような勢いで反対側にジョージが座った。
ビルとチャーリーが帰ってきてからは二人のどちらかと居る事が多い。
なのでなんだかジョージを見るのが久しぶりのような気がした。
昼食の後、ジニーとハーマイオニーに引っ張られてテントに引き摺り込まれる。
一見すると小さいテントだけれど中はとても広かった。
思う事は、やっぱり魔法って凄い。
「やっと話せるわ。名前ったらいつもビルかチャーリーと一緒なんだもの」
拗ねたようにハーマイオニーが言い放つ。
隣でジニーがその通りだと頷いている。
「ビルって名前が言う通り素敵ね」
「ビルはママの自慢なのよ」
「名前が好きになるのも解るわ」
「ちょっと待って!なんでハーマイオニーが知ってるの?」
「あら、バレバレよ?」
ハーマイオニーの言葉に嫌な汗が出て来た。
確かにチャーリー、ジニー、ジョージの三人にはバレている。
フレッドはジョージから聞いていそうだから全く気にしていない。
何よりフレッドが好きな相手を私は知っている。
ハーマイオニーの言葉が本当なら他の人にもバレているのだろうか。
「ビルは名前をどう思ってるのかしら?」
「さあ…でも名前には甘いわよね」
「え?そう?」
「何言ってるのよ名前。その腕時計だってビルから貰ったじゃない」
「これは成人のお祝いにビルとチャーリーから貰ったのよ」
そうなの?と二人が興味津々で見る腕時計。
チャーリーにもお礼を言ったのをジニーは見ている筈なのに。
「でも、名前を大事にしてる事は確かよね。ずっと一緒に居るんだもの」
初めて会った私でも解るわ、と微笑むハーマイオニーから隠れるようにジニーの後ろに移動する。
そうあれば良いと思った事は何度だってあるけれど、なるべく今は考えたくないのだ。
(20121202)
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