庭の大きな木の根元でロンとフレッドとジョージが箒で飛ぶのを眺める。
ジニーが隣で編み物をしていて私は時々間違いを指摘しながら過ごす。
何でもないいつも通りの午後だけれど、ゆったりしていて幸せな午後。


「此処に居たのか」

「あら、チャーリー。お帰りなさい」

「編み物か」

「ええ」


ジニーとチャーリーの会話を聞きながらゆるゆると其方を向く。
チャーリーの後ろにビルが立っていて私は何故か慌てて立ち上がった。
ビルがクスクス笑いながら私の横に座ったので私も再び腰を下ろす。


「ただいま」

「お帰りなさい。いつ帰ってきたの?」

「ついさっきだよ。皆庭で遊んでるって聞いてさ。チェシャーも居るよ」


ビルが指した先にチェシャーが飛んでいる。
機嫌が良さそうできっと今から狩りに行くのだろう。


「名前、これあげるよ」

「なあに?」

「薬草の本。役に立つかもしれないと思ってね」

「有難うビル!」


早速開くと薬作りに役立ちそうな薬草が載っている。
なかなか家では調合も出来ず、資料も集まらないので中断していた。
ダイアゴン横丁に行った時に書店で探そうと思っていた本。


「手伝おうか?」

「もう少し頑張ってみるわ。煮詰まったらお願いするかも」

「そっか。無理しない程度に頑張るんだよ」


ビルの手が頭を撫でるのが心地良く、幸せな気持ちでページを捲る。
時々ビルに薬草の説明をして貰いながら読み進めていく。
遠くでモリーさんが夕食だと呼ぶ声がするまでそのままだった。


夕食が終わり、それぞれ好きな事をしているウィーズリー家のリビング。
夕方に此方に着いたハーマイオニーと私以外皆綺麗な赤毛だ。
私の大好きなウィーズリー家の人達。
パーシーのクラウチさん話を聞かされているハーマイオニー。
モリーさんと編み物をするジニーにその横で人魚姫を読むアーサーさん。
こそこそと相談しているフレッドとジョージにドラゴンの話をするロンとチャーリー。
私がする薬草と魔法薬の質問に答えながらチェシャーと戯れているビル。
日曜日にはハリーが来るので大人数になるけれどアーサーさんもモリーさんも何も言わない。


「名前、解らない所でもあった?」

「え?」

「手が止まってる」

「あ、違うの。ただ、賑やかだなって思って」


ビルがぐるりと皆を見渡して確かに、と頷く。
私は家族三人で過ごして来たのでこの賑やかさは知らない。
お父さんもお母さんも優しくて家は家で楽しかった。
けれど、兄弟が居ない私には七人兄弟は少し憧れる。


「最初に七人兄弟の事を聞いた時、ビルが似てるかどうかは自分で確かめてみてって言ったでしょ?」

「言ったね。懐かしいな」

「実際に見てみたけど、私は似てると思うわ」


一見するとパーシーとフレッドとジョージは正反対に見える。
けれど、実は皆優しくて家族想いなのだ。
パーシーは真面目過ぎる所に隠れて見えないだけ。
七人皆が自分の家族を大切にしているからウィーズリー家は暖かい。
そうビルに伝えるとふんわりと微笑んで頭を撫でてくれた。


「そういえば、成人おめでとう」

「有難う」

「本当は誕生日に贈りたかったんだけどね」


そう言ってビルが出したのは少し大きい包み。
ビルの顔と包みを交互に見てから包みを開く。
中から出て来たのはベルト部分がチェック柄の腕時計。
マグルの私なら当然知っている有名なブランドの物。


「ビル、これ、高いんじゃ…?」

「僕とチャーリーからだよ。魔法界では成人の誕生日には時計を贈るんだ」

「あ、りがと…嬉しい」

「簡単には壊れないように魔法をかけてある」


今までしていた腕時計を外して新しい腕時計を付ける。
それはキラキラしていて、まだ私の腕には不釣り合いな気がした。




(20121130)
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