試験が全て終わり、歩いているとルーピン先生にお茶に誘われた。
断る理由もないのでそのお誘いを受けると先生はしっかり茶葉から淹れてくれる。
相変わらず沢山砂糖を入れている先生に苦笑いを浮かべながらクッキーを摘む。


「試験はどうだった?」

「それなり、です」

「採点が楽しみだよ」


先生は何処か疲れて見えて病人のように見える。
この一年、課題をやりながら気付いた事が一つ。
ルーピン先生は月に一度姿を消す。
もう既に授業で習っているから他にも気付いた人が居るかもしれない。
ぼんやりカップの中にある水面を眺めながら考える。


「私、先生はとても良い先生だと思ってます」

「有難う。嬉しいな」

「だから、来年も居て下さると嬉しいです」

「ああ…そう、だね。そうだと嬉しいけど、少し恐くもあるかな」

「それは…先生が人には言えない秘密を持っているからですか?」


ルーピン先生は目を丸くした後に苦々しく笑う。
言ってしまった私の言葉は恐らく当たっている。
けれど今まで誰にも言わなかった事だ。


「誰にも言っていません。私にとって先生がそうであろうとなかろうと関係ないんです」

「どうして?」

「私、マグル生まれですから。人狼だろうが吸血鬼だろうが巨人だろうがそんな事は取るに足らない事です。それこそ、スリザリンでも」


先生はきょとんとした後にクスクス笑い出す。
紅茶を飲み干してもまだ先生は笑っていた。




フラフラ廊下を歩いてぼんやりと考える。
やっと来たチャーリーの手紙には痕は消えなかったと書いてあった。
今から調合しても良いけれど時間が足りない気もする。


「おーい、名前」

「フレッド。一人?」

「ジョージは今頃食糧を集めてる」

「また何かするの?」


まあね、と笑ったフレッドの手元にある箒。
きっと部屋に籠もって何か悪戯道具を作るのだろう。


「フレッド、箒貸して」

「箒?良いけど…名前、それじゃ寒いだろ」


フレッドは自分のローブを私に被せる。
背の高いフレッドの物は私には長い。
けれどローブは暖かくて少し火薬の匂いがした。




校庭を飛んでいると容赦なく風が吹き付ける。
雪が解けて暖かくなってきたとはいえやはり日が暮れると寒い。
フレッドにローブを借りて良かった。
制服のままでいたらきっと寒かっただろう。


箒で飛ぶ事なんて滅多にないけれど、偶にこうして飛ぶと気持ち良い。
けれどやっぱりチャーリーの後ろに乗るのが一番好きだ。


もう門限は過ぎているしそろそろ帰ろうと禁じられた森の近くに降り立つ。
ふと何かが目に入って咄嗟に杖を振った。
呪文で出した網が捕らえていたのは小さな鼠。
この禿げて痩せている鼠には見覚えがある。


「スキャバーズ?」


キーキーと暴れているのは恐らくスキャバーズだ。
今日はもう遅いし、明日にでもロンに渡そう。
これでロンとハーマイオニーが仲直りする筈だ。




(20121130)
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