クィディッチ杯を取った事で談話室はお祭り騒ぎだった。
ウッドは泣きすぎて目が真っ赤になりながらシャロンと踊っている。
フレッドとジョージが何かする度爆発したかのように笑いが起こった。
マクゴナガル先生でさえバタービールやお菓子を用意してくれた位。
試合が終わった後のマクゴナガル先生はウッドにも負けない大泣きだった。
そんなお祭り騒ぎの隅っこで手紙を書き終えるとチェシャーにお願いする。
チェシャーはお祭り騒ぎの声にご機嫌斜めだ。
撫でてお願いね、と言うといつもより乱暴に飛び立つ。
帰ってきたら少し良い物をあげよう。
「名前」
「ジョージ?抜けてきても大丈夫なの?」
「もう充分だと思うよ」
そう言って指差した方を見ると確かに今や皆それぞれに騒いでいた。
成程、と頷くとジョージがボスンと勢い良く隣に座る。
ちょうどフレッドがアンジェリーナとアリシアに抱きついたのが見えた。
「…マルフォイに手紙?」
「そうよ」
「ふぅん」
ジョージはテーブルの上の羊皮紙の切れ端を折り始める。
きっと今彼の心の中は面白くない気持ちで一杯なのだろう。
出来上がった紙飛行機をジョージが魔法で飛ばす。
それは皆の頭上を飛んで見えなくなった。
「ねえ名前、今日の俺どうだった?」
「かっこよかったわよ」
「本当に?」
「嘘言ってどうするのよ」
ツン、と人差し指で少し高い位置にある額を突つく。
ジョージはいきなりボッと顔が赤くなり、クッションで顔を隠す。
まさかの反応になんだか私まで落ち着かなくなってしまう。
「ちょっと、ジョージが聞いたんじゃない」
「そうだけど…まさかそんな、反則だ」
ゴニョゴニョと口の中で何かを呟いてジョージは顔を上げた。
相変わらず顔が赤くて目は泳いでいたけれど、腕が二本伸びてくる。
そのままジョージに抱き締められてしまった。
「ジョージ?」
「名前、忘れてない?俺一応告白したんだけど」
「あ…ちゃんと覚えてるわ」
「…じゃあ、俺の事少しは考えてよ」
ぎゅうと力が込められた腕とは反対に声は少し弱い。
どうしようか、と思いながら背中をぽんぽんと叩く。
今がパーティーの最中で良かったと本当に思う。
フレッドとジョージに抱き付かれるのなんて日常だったけれどこの会話は聞かれたくはない。
目の前のジョージの胸に額を押し付けて小さく小さく息を吐く。
聞こえないようにと思ったけれどこの距離ならやはり聞こえてしまったらしい。
ピクリとジョージの体が震えた。
「ごめん、俺我儘だった。答え聞く気ないのに」
離れた事で見えたジョージの表情は思いの外明るい。
いつの間にジョージはこんなに成長していたのだろう。
まだまだ変わらないと思っていたのに。
「名前、腹減らないか?パイ持ってくるぜ」
「あ、うん」
「待ってて」
ニッと笑うジョージを見送って自分の手を握る。
私を真っ直ぐに見るジョージの目が見られない。
ビルの顔が浮かんでは消えていく。
(20121127)
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