ホグワーツ特急の予約表を眺めながら私は小さく唸る。
元々クリスマスには帰るつもりが無かったので名前を書かなくても問題は無い。
けれど、皆が帰ってしまうらしくシャロンの名前も書いてあった。
チャーリーとパーシーも帰るようで名前が書いてある。
もしかしたら寮には私一人になるかもしれない。
うーん、と再び小さく唸って私はソファーへ座る。
ちょうど同じタイミングでビルとパーシーが座った。


「やあ、名前。一人?」

「うん。シャロンは荷造りしてるわ」

「そっか。名前は残るんだっけ?」


ビルの言葉に頷くとパーシーが教科書を開きながら顰めっ面をしているのが見えた。
私と目が合うと直ぐ顔を教科書に向ける。
ビルを見ると肩を竦めて曖昧に笑う。


「パーシー、どうしたの?」

「ちょっと拗ねてるのさ。僕が残るから」

「え?ビルは帰らないの?」

「最後の年だからね。ホグワーツで過ごそうと思って」


笑うビルの言葉に私は大喜びしたいのを一生懸命堪える。
てっきりビルも帰るものだと思っていた。
パーシーには申し訳ないけれど私は嬉しくて仕方ない。
相変わらずむっつりしているパーシーの頭をビルが撫でていた。
パーシーは顔が真っ赤で嫌がっていたけれど。




クリスマス休暇の朝、私は変に早くに目が覚めて談話室に降りた。
ビルは既に起きて暖炉の前で本を読んでいたけれど私に気付いて笑う。
いつもは纏められている髪の毛が今は纏められていない。
それだけでなんだか雰囲気がガラリと変わって見える。


「メリークリスマス」

「メリークリスマス。名前のプレゼントはそこだよ」


ビルが指した先にプレゼントで小さな山が出来ていた。
近寄って一番上の小さな包みを持ち上げる。
隣にある山はビルの物らしく近くのクッションを持ってきてビルが座った。


「それは僕から名前に」


言われて丁寧に包みを開けると出てきたのはブックマーカー。
金色で雫型のチャームが付いていてキラキラと光る。
使う時まで汚れないように綺麗に包み直す。


「凄く綺麗!有難うビル」

「うん」


ニコッと笑うビルは髪型が違うせいか魅力が増したように見えた。
誤魔化すようにビルのプレゼントの山に私からのプレゼントを乗せる。
誕生日の時と同じでかなり悩んで決めた。
悩みに悩む私を見てシャロンが溜息を吐いていたのを覚えている。
プレゼントを開けたビルは喜んでくれたようで一安心。


朝食を食べた後は二人でハグリッドを尋ねた。
三人で雪だるまを作ったけれど一番背の低い私は二人が雪玉を重ねるのを見ているだけ。
ハグリッドが勢い余って雪玉を飛ばしてしまい、ビルと私は頭から沢山の雪を被った。


「すまねぇ。ちぃと張り切り過ぎちまって」


暖炉の前で暖まるビルと私に申し訳無いとハグリッドは何度目かの謝罪をする。
気にしないでと言った直ぐ後ファングに飛びつかれて私は頭を打つ寸前だった。
ビルが咄嗟に支えてくれてハグリッドはオロオロとまた謝る。


「大丈夫よ、ハグリッド」

「いや、すまねぇ。ビルのお陰で無事で済んだ」

「ハグリッド、僕達と城に行こう。お昼の時間だ」


クリスマスランチはとても豪華で更にはビルと二人だったので私にとって最高のご馳走だった。
談話室に戻るとチェスを教えて貰う為に暖炉の前に座る。


「名前、チェスはやった事ある?」

「見た事はあるわ。魔法使いのチェスは初めて」


ビルは一から全部教えてくれて、実際にやってみる事にした。
見ている時はさっぱりだったけれど実際やってみると楽しい。
尤も、私が見ていたチェスは喋らないし自動で動いたりしないけれど。


「名前なかなか覚えが良いね」

「全然よ。ビルが本気になったら勝てないわ」

「じゃあ、いつか僕と真剣勝負して名前が勝ったらお願いを一つ聞いてあげるよ」

「本当?約束よ?」


良いよ、と笑うビルを見ながら私の頬は緩みっぱなしだろうと思った。




(20120628)
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