「ちゃんと大人しくしているんだよ」

「はい」

「行ってきます」

「行ってらっしゃい」


クリスマスの朝仕事の用事でダイアゴン横丁へ向かうビルを見送ってドサリとソファーに身を沈める。
着いて行きたかったのだけど、少し熱っぽいのだ。
体調が良かったら連れて行ってくれる筈だったのに。


キッチンではモリーさんとチャーリーが髪の毛について話をしていた。
その横でニコニコと二人を見ているアーサーさん。
そういえば、ビルも切ったらどうかと言われていた気がする。
少し伸び放題なチャーリーの髪の毛はモリーさんは切りたくて仕方ないのだろう。


「おはよう名前」

「あら、おはようフレッド」

「隣、座っても?」

「どうぞ」


寝癖の付いた赤毛と、パジャマ姿のフレッド。
珍しくフレッド一人で降りてきた。
私に倣うように暖炉の炎を見つめる。


「名前、怒ってる?」

「別に怒ってないわよ。怒って欲しいの?」

「そうじゃないよ。怒ってないなら良いんだ」


ニコッと笑ってフレッドは朝食を食べにキッチンへ向かう。
入れ替わるようにチャーリーが来てソファーに座った。
モリーさんの気が逸れた隙にキッチンを抜け出してきたらしい。


「名前、寝てなくて良いのか?」

「大丈夫。ビルが少し大袈裟なのよ」

「まあ、ビルの言う事も解るけどな」

「私ビルと出掛けたかったもの」

「拗ねるなよ」


微笑んでチャーリーが私の頭を撫でる。
その手にも幾つも火傷の痕があった。
指でなぞると擽ったそうにチャーリーが笑う。


「ドラゴンの研究楽しい?」

「楽しいよ」

「痕は、消えないのね」

「まあな。次から次へと出来るからな」


火傷の痕をなぞりながら、数を数える。
けれど数えきれずに途中からなぞるだけになってしまった。
私の好きにさせてくれるチャーリーは何も言わない。
この痕を少しでも薄くする事は出来ないだろうか。
多分チャーリー自身は気にしていないだろうけれど。
ホグワーツに戻ったらドラゴンの本を読んでみようか。


「名前、ちょっと擽った…あ」

「あ?」

「名前、チャーリー、何してんの?」

「おはようジョージ。フレッドよりお寝坊さんね」


ただ立っていたジョージが近づいて来て私とチャーリーの手を掴んだ。
ジョージは先程のフレッドと同じ所に寝癖がある。


「名前、こっち」

「はいはい」


ジョージに手を引かれるままキッチンに連れて行かれた。
苦笑いをするチャーリーは仕方ないという風に肩を竦める。


ジョージがトーストをかじるのを隣で見ながらモリーさんが淹れてくれた紅茶を飲む。
するとチェシャーが飛んできて体を摺り寄せた。
ジョージにトーストの端っこを貰いチェシャーに差し出す。
ジョージがチラチラと此方を見るのでチェシャーを差し出してみる。
驚いたジョージが面白くて笑っているとチェシャーが飛び出していく。


「名前、怒ってないの?」

「怒ってないわよー。怒って欲しいなら別だけど」

「だって、俺達を構ってくれないし」

「それはジョージが避けてたからでしょ」


額を突つくとぽかんとした後に笑顔になった。
恋愛感情どうこうは別として、ジョージは笑顔の方が良い。
フレッドがニコニコしているのを見て改めて思う。




(20121124)
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