静かに雪が降るのを頬杖を付いて眺める。
特に何を考えている訳ではないけれど、誰も話しかけてこない。
外ではフレッドとジョージが雪だるまを作っている。
ジニーがチャーリーに課題を教えて貰っている声だけが響く。


チェシャーが飛んできて体を摺り寄せてくる。
羽根を擽るように撫でると満足そうに鳴く。
ふわふわのチェシャーも同じように窓の外を眺め始めた。
雪は止みそうになく、空は真っ黒な雲に覆われている。
誰かがソファーに座ったらしく、私の体が揺れた。


「名前」

「え?あ、ビル?」

「考え事?」

「えっと…ううん、ボーッとしてた、だけ」


いきなりのビルの登場に驚いていると後ろでチャーリーがニヤニヤしている。
ぼんやりしていた間に帰ってきたらしい。
そんなにボーッとしていたつもりはないのだけど。
ちゃっかりビルに摺り寄っているチェシャーは嬉しそうだ。


「チェシャー、ビルの事大好きみたい」

「一応飼い主だからね。好かれてなきゃ」


ビルがチェシャーを止まり木に運ぶのを追いかけるとフレッドとジョージが入ってきた。
二人とも外で遊んでいたせいか耳まで真っ赤になっている。
二人はビルと挨拶を交わして暖炉の前に移動した。
ジョージがチラッと此方を見て何か言いたそうな顔をする。
けれどフレッドに引っ張られて顔を逸らす。
私も顔を逸らしてキッチンに居るビルの隣に座った。


「名前、二人と喧嘩でもしたのかい?」

「あの二人が子供なのよ。名前がマルフォイとホグズミードに行ったのが気に入らないんだわ」


私の代わりに答えたジニーの言葉にチャーリーは驚いている。
ビルは手紙に書いているし、ドラコと交流がある事を元々知っていた。
ジニーはフレッドとジョージを見てフンと鼻を鳴らす。


「名前、僕から言おうか?」

「大丈夫。そのうち、ちゃんと話すわ」

「それなら良いけど」


ビルが微笑んで私の頭を撫でる。
ドキン、と鳴り出す心臓が心地良い。
幸せだと全身に送り出すようだ。


「マルフォイって、あのマルフォイだろ?」

「ルシウス・マルフォイの息子だよ」

「名前の隣で大人しく本読んでるのを見た事あるわ」

「父親とはえらい違いだな」

「名前の前だけよ、きっと」

「ふぅん」


ドラコの事を三人が話しているのを不思議な気持ちで眺める。
やっぱり、ビルとチャーリーはちゃんと話を聞いてくれた。
こうして話をしていると昔に戻ったような気持ちになる。
グリフィンドールの談話室で課題をやりながら色々な話をしていた頃。
シャロンも居て、偶にパーシーが一緒で五人でテーブルを占拠していた。
懐かしくてほんわかとした気持ちになる。
思わず笑い出した私に三人が揃って首を傾げた。


「あ、ごめんなさい。ビルとチャーリーがホグワーツに居た頃を思い出して懐かしくて」

「名前が一年生の頃の話だろ?」

「うん。チャーリーは五年生だったわ」

「それが今じゃ名前は六年生で監督生だからね。ジニーは二年生だし」

「俺もビルももう何年も経つしな」


チャーリーが隣のジニーの頭を撫でる。
ジニーはさして気にする事もなく、羽根ペンを動かす。
一人っ子の私は、兄弟って良いなぁ、と改めて思う。


「私魔法使いで良かった」


ボソッと呟くと三人が優しく笑ってくれた。
魔法使いでなければ今こうして居る事も、皆に出会う事すら出来ない。
ビルを好きでいる自分だって存在していなかったのだ。




(20121124)
124
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -