「本当にマルフォイと行くの?名前、辞めて俺と」
「しつこいわジョージ。貴方フレッドとリーと行くんでしょう?」
「でも」
「ほら、行きなさい」
ジョージの背中を押してフレッド達の所に送る。
困ったもので朝からジョージはとても煩いのだ。
シャロンはもう諦めたらしく何も言わない。
フレッドもきっとシャロンに言われたのか何も言わなかった。
本当は諦めるのではなくて理解して欲しいのだけど。
溜息を吐いてドラコの待つ方へ進む。
「なんだ、溜息なんか吐いて」
「え?ドラコ?」
「迎えに来たんだ。遅いから」
腕を組んでそう言うドラコは私の後ろを見て眉を寄せる。
首だけで振り返るとジョージがフレッドに引っ張られて歩いて行くところだった。
二人に手を振って前を向いた私とまだ二人をジッと見ているドラコ。
ドラコの手を引っ張ってホグズミードに向かって歩き出す。
無言だったドラコが慌てて自分で歩けると訴えるので手を離した。
ホグズミードは風が容赦なく吹き付けてとても寒い。
とても長い時間外には居られず、近くのカフェに入った。
混んでいるという事は皆考える事は同じなのだろう。店内の隅の方にパーシーとペネロピーを見つけた。
相変わらず仲が良さそうで思わず零れた笑いにドラコが不思議そうな顔をする。
パーシーとペネロピーは微笑ましい二人だ。
「そういえば、腕は治ったの?」
「ああ、元通りだ」
「随分と長引いていたみたいだけど」
「あ…そう、だな。少し」
少しだけ咎める口調にドラコは視線を彷徨わせる。
自覚はあるらしいので何も言わないでおく。
もしかしたら本当に痛かったのかもしれないし。
痛いか痛くないかなんて本人にしか解らない事だ。
視線を彷徨わせているドラコを見ながら紅茶を一口飲む。
少しだけ、チャーリーがくれた茶葉に似た味がする。
「外、寒そうだわ」
「…前から気になっていたんだが」
「ん?」
「名前は、幾つ科目を取っているんだ?」
「全部よ。ドラコ達の学年だとハーマイオニーがそうね」
ハーマイオニーの名前にドラコの眉がピクリと動く。
あの言葉を言わないだけまだ良いだろうか。
私の知らない所では言っているらしいけれど。
「どうしてそんなに沢山」
「それはね、私の憧れの人がそうだったからよ」
「憧れの人?」
「うん。今はグリンゴッツで働いてるわ」
ビルの事になると私は次々言葉が出てくる。
どんなに素敵な人かはとても語り尽くせない。
ビルの事ならこのままずっと語れそうだ。
けれど、ドラコの前では名前は出さない。
きっとウィーズリーの名は彼には聞きたくない名だ。
ドラコはただ黙って、紅茶を飲んで聞いている。
「僕に構うのもそいつに憧れているからか?」
「それは違うわ。私がドラコと仲良くしたいのよ」
「…そうか」
前に一度見た、ふんわりと笑うドラコ。
また見られて私もつられて笑顔になる。
ドラコはそんな風にも笑えるのだ。
そういう風に笑った方が絶対に良いと思うのだけど。
「ドラコ、今度一緒に写真撮りましょうね」
「写真?」
「ええ。私の思い出作り」
ドラコの写真は敢えてマグルの写真にしよう、と思った。
魔法界で育った彼にはきっと動かない写真は珍しい筈。
写真を見てなんだこれは、と言うだろうか。
想像するとなんだかおかしくて堪える事なく笑う。
それに首を傾げたドラコが凄く幼くて可愛く見えた。
(20121120)
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