ハリーのお見舞いに皆が次々に行くので私はなんだか遠慮してしまった。
安静にしなければ、とマダム・ポンフリーに言われそうな程。
ロンとハーマイオニーが付きっきりというのも理由の一つ。
ハリーは退院してからも目に見えて落ち込んでいるように見えた。
反対にドラコは嬉しそうにハリーをからかっている。
その度に羊皮紙を飛ばしていたのだけど、きっと私が見ていない所ではやっているのだろう。


クリスマスが近くなってくると城の中が活気づいてきた。
あちこち賑やかく、談話室もとても混んでいるので最近は図書館に居る時間が多い。
書き上がったレポートを丸めているとプラチナ・ブロンドが覗いた。
悪戯心が芽生えて棚に隠れているつもりだろうドラコにこっそり近付く。
名前を呼びながら肩に手を置くと、ビクッとドラコの体が大きく跳ねた。


「お、驚くだろうっ!」

「ドラコ、大声出したら怒られちゃうわ」

「あ、ああ、すまない……脅かしたのは名前だろう」


ふて腐れながらドラコは私が座っていた隣の椅子に座る。
私も座るとドラコが積んである教科書を物色していた。
魔法薬の教科書に興味を持ったらしくパラパラと捲り始める。


「六年生の魔法薬よ?」

「見るくらい、良いだろう」


どうやら完全にふて腐れてしまったらしい。
投げやりな言い方に苦笑いを零して青白い頬を突つく。
チラリと目だけで此方を見て直ぐに本に戻ってしまう。
それでも辞めずに突ついていると、手を掴まれた。


「課題をやるんじゃないのか?」

「ドラコが手を離してくれたらね」


掴まれた手を左右に振ってみるとドラコの手の力が抜ける。
フンと鼻を鳴らしてドラコは教科書に視線を戻す。
私も羽根ペンを持って新しい羊皮紙にレポートのタイトルを書く。
文字を書く羽根ペンの音とページを捲る本の音は耳に馴染んで心地良い。


私がレポートを書き上げるのとドラコが本を読み終わるのは一緒だった。
書き上がったレポートを丸めていると薄い青色の瞳と目が合う。


「教科書は面白かった?」

「あぁ、まあまあだな」

「そう、良かった」


ドラコから魔法薬の教科書を受け取って鞄にしまった。
机の上にある自分の教科書や羊皮紙、インク瓶を片付ける。
その間ドラコは何も言わずにずっと此方を見ていた。
最後の羊皮紙をしまい終えて顔をあげるとまだ此方を見ている。
何か言いたい事があるのは解るけれど、見られていると落ち着かない。


「どうしたの?」

「…ホグズミード、の事はもう見たか?僕と、一緒に行かないか?」

「良いわよ」

「え?」

「やだ、ドラコったら。前に約束したじゃない」


驚いた顔で固まってしまったドラコの頬を突っつく。
相変わらず青白いのはどうしてだろう。
やはり太陽に当たっていないからだろうか。
クィディッチの練習はしている筈だけれど。


「突つくな」

「はーい」

「…約束だからな。取り消しはなしだ」

「ドラコもね」


今度はプラチナ・ブロンドを撫でるとムッとしてしまった。




(20121120)
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