クィディッチの最初の試合を控えた前日、天気は最悪だった。
いつも座っている窓際に居ると雨の激しさがよく解る。
ビルの所に行っているチェシャーがこんな日に帰って来ないか心配で仕方がない。
あの子は賢くて強いけれど他の梟よりも小さいのだ。
毎回天気の悪い時はチェシャーが心配で堪らない。
何よりもビルから借りている梟だ。


「名前、窓際に居て寒くないか?」

「平気よ」


ジョージが自分の腕をさすりながら隣に座る。
あのホグズミードの日以来、ジョージの態度は全く変わらない。
私も変わらず接しているのでうっかり忘れそうになる。


「また教科書読んでるのか」

「課題なの。ジョージもやったら?」

「俺は明日の事で頭一杯だ」

「俺もな」


ドサリと反対側にフレッドが座った。
確かに二人にとって明日の試合は大事なのは間違いない。
ウッドはアンジェリーナ達に熱心に指示を与えている。
ハリーは見当たらないからきっと部屋に引き上げたのだろう。


「二人ともウッドの指示は聞いたの?」

「もうたっぷり聞いたさ」

「今頃シャロンが逃げてるだろうよ」


フレッドが言った通りシャロンがバタバタと此方へ走ってきた。
遠くの方でウッドがキョロキョロ辺りを見回している。
シャロンは隠れるようにフレッドの後ろに潜り込む。
やがて探すのを諦めたらしくウッドは寮へと登って行った。


「やっとだわ」

「お疲れ様。すっかりお気に入りね」

「名前も一度聞いてみたら良いのよ。ウッドの演説長いんだから!」

「まあまあ、今年が最後なんだぜ」


慰めるように肩に回されたフレッドの腕を払いのけてシャロンは腕と足を組む。
相当長い時間聞かされたのかどうやらご機嫌が良くないらしい。
フレッドがご機嫌を取ろうとクッキーを取り出すのを見て教科書に目を戻す。
すると、肩にジョージの頭が乗っかった。


「ジョージ?」

「俺も読む。名前相手してくれないから」

「読むペース合わせないわよ?」

「大丈夫」


何が大丈夫なのかはさっぱりだけれど、真面目に読む気はないのだろう。
結局ジョージは私が読み終わるまで静かに一緒に本を読んでいた。




シャロンとジニーと自分に防水呪文をかけたので私達は平気だけれど、試合の展開はよく解らない。
一応フレッドとジョージには防水呪文をかけたゴーグルを渡してあるから大丈夫だとは思う。
さっきのタイムアウトの時にハーマイオニーが走って行ったからハリーも見える筈だ。
雨は勢いが全く弱くならず、この中を箒で飛ぶなんて危なくて心配で堪らない。
ジニーと繋いでいる手に力が入るけれどどちらの力かは解らなかった。


「ハリーとディゴリーがスニッチを見つけたわ!」


シャロンの声が聞こえて指差された方を見ると二人がスニッチを追っているのが見える。
しかし、次の瞬間ディメンターがグラウンドに現れた。
遠いけれど、観客席も冷たい空気が充満している。
皆は、と選手達を見て私の心臓は止まってしまうかと思った。
隣でジニーがハリーを呼ぶ声がする。




医務室から出て来た皆にハリーが無事目覚めた事を聞いて息を吐いた。
皆にタオルを渡しているとジニーがふらふらと床に座り込む。
きっと気が抜けてしまったのだろう。
廊下で待っている間ジニーの顔は真っ青だった。


「ジニー、立てそう?」

「うん、大丈夫」

「明日ハリーのお見舞いに来ましょう?」


頷いたのを確認してジニーと手を繋いで歩き出す。
皆がシャワーを浴びに急いで歩いて行くのを後ろから追いかける。




(20121120)
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