「ビルの誕生日?」

「うん。何を贈ろうか迷ってて」


チャーリーに飛行術の乗り方を教えて貰った帰り道。
ビルの誕生日が再来週だと聞かされて私は衝撃を受けた。
チャーリーはあれでもないこれでもないと話している。
私は相槌を打ちながらもどうしようという気持ちで一杯だった。


部屋に戻るとシャロンが飛ばした杖が私の顔の横を飛んでいく。
壁にぶつかって落ちた杖をシャロンに返すと苦笑いをした。


「箒には乗れるようになった?」

「大分上達したと思うわ。それよりもシャロン大変なの!」


私の話を聞いたシャロンは任せなさいと笑ってカタログをベッドに置く。
初めて見るそれは魔法グッズやお菓子が沢山載っている。
見ているだけでワクワクしてしまう。


「ビルは何が欲しいかしら」

「名前があげたいと思う物をあげれば?」

「ビルが喜びそうな物をあげたい」


シャロンは難しいわね、と眉を寄せてもう一冊の本を捲っている。
それにはクィディッチ用品が載っていてチャーリーの誕生日にはそのカタログを借りようと決めた。
カタログをあちらへこちらへと捲る事を繰り返す。
気付けばシャロンはカタログを顔に乗せて眠っていた。




ビルの誕生日、朝から会えないかとチャンスを窺う。
廊下で見かけた時にはちょうどハッフルパフの行列が通り過ぎて見失ってしまった。
昼食の時間は運悪くハグリッドに捕まってしまうし、ついていない。
大急ぎで大広間に行くとパーシーが教科書を広げていた。


「パーシー、ビルは?」

「ビルならさっき次の授業に向かったよ」


力なく椅子に崩れ落ちる私にパーシーは不思議そうな顔をする。
半ば自棄で昼食を急いで食べると午後の授業に向かう。
良い事があるとすれば今日の魔法薬の出来は最高だった事くらい。


授業が終わって片付けているシャロンを置いて一目散に談話室に戻る。
見渡すとチャーリーがクィディッチメンバーと話していてパーシーは本を読んでいた。
ビルが居なくて私は項垂れながら部屋に鞄を置き談話室へ戻る。
ちょうどシャロンが入ってくるところで隣にはビルが居た。
ビルは私に挨拶をして足早に部屋へと上がっていく。


「名前!私を置いていくんだもの」

「ごめんなさい。ビルを探してて…でもシャロンと居れば良かったわ」

「違うのよ名前、あのね」


シャロンの話を聞いて私はギョッとした。
どうやらハッフルパフの上級生がビルに惚れ薬入りのケーキを食べさせようとしていたらしい。
ビルが受け取る前にとシャロンが助け船を出したお陰で助かった。
名前の為だしね、とウインクするシャロン。
思わず抱きつくとよろけながらも受け止めてくれる。
私から離れたところでビルが降りてきた。
シャロンは私の肩をポンポンと叩いて部屋へと消えていく。


「ビル!誕生日おめでとう!」

「有難う名前。夕食行くなら一緒に行くかい?」

「うん」


廊下に出ると何人もビルに近寄ってはプレゼントを渡したりお祝いの言葉を掛けたりする。
お陰で全く会話が成り立たずに大広間へと着いてしまった。
渡しそびれたプレゼントはポケットの中。
どうしよう、と悩みながらオレンジジュースを注ぐ。


「あぁ、そうだ。僕に何か用があるんだって?」

「え?」

「オルコットがそう言ってたけど、違う?」


ぎこちなく首を振って否定すると私はポケットから小さい袋を出して差し出す。
ビルは笑顔で受け取って私の許可を得て開けにかかる。
それをドキドキしながら眺めて乾いた喉にオレンジジュースを流し込む。
私はあのカタログの中で写真立てを見つけた。
三枚写真を入れると時間で変わる魔法がかかっている。


「名前、嬉しいよ!」

「良かった」

「今度皆で写真を撮ろう。それを飾る」


約束、と言うビルの笑顔に私も笑顔で返す。




(20120626)
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