ハロウィンの朝、フレッドとジョージとシャロンと四人で朝食を済ませ、そのままホグズミードまで一緒に歩いた。
すっかり背が伸びた双子は今や私より背の高いシャロンよりも大きくなっている。
そんな二人に挟まれて歩いていたけれど、フレッドがそれじゃあと言って先にシャロンと歩いて行った。
手を振りながらそれを見送って隣に立つジョージを見上げる。
目が合うとジョージは一瞬目が泳いでから行こうかと歩き出す。
変なジョージ、と呟いて私も後を追いかける。


「名前、行きたい所ある?」

「ジョージはゾンコでしょう?」

「俺はそうだけど…名前の行きたい所からで良い」


行きたい所と尋ねられても直ぐには思い付かず、悩みながら足を進める。
ビルの誕生日プレゼントを買おうとは思ってはいるけれど、これと言って決まっていないし。
それに恐らくジョージがゾンコに行くだろうと思って何も考えていなかった。


結局ふらふら歩きながらもビルの誕生日プレゼントを無事買えたのだけどジョージは何故か拗ねている。
話しかければ答えてくれるけれど、あまり会話が続かない。
バタービールをちびちびと飲みながらジョージはチラチラ私を見る。


「ジョージ」

「ん?」

「何拗ねてるの?」

「別に拗ねてなんかないさ」

「ふぅん」


真っ直ぐジョージを見つめるとサッと顔を逸らされた。
頬杖を付くとちょうどバタービールを持って歩いてくる二人が目に入る。
二人も此方に気付いたようでそれぞれ空いている席に座った。


「おいおい相棒、何拗ねてるんだ」

「拗ねてない」

「…名前、何かあったのか?」

「何もないよ。行こう名前」

「え?ちょっと、ジョージ?」


立ち上がったジョージに腕を引かれて慌てて鞄を掴む。
苦笑いしながら手を振るフレッドとシャロンに手を振り返す。


私の腕を掴んだまま歩いて行くジョージの背中。
勿論背中からは何も解らず、私はただ後を着いて行くだけ。
拗ねているのは間違いないのだけど、認めたがらない。
どうしたものかと何気なく視線を巡らせるとパーシーとペネロピーを見つけた。
生憎、二人とも此方に気付く余裕はないようだけれど。


「わっ!いきなり立ち止まらないでよジョージ」

「…名前」

「ん?」

「名前はやっぱりビルが好きなの?」


振り返る事なく放たれた疑問に私は慌てる。
隠していた訳ではないし知られて困る事でもない。
ただ言っていなかっただけで、改めて言われるとドギマギしてしまう。
掴まれている腕に力が入ってジョージが振り向いた。


「うん、ビルの事好きよ」

「ビルはそれ知ってるの?」

「知らないわ」


ジョージは視線を彷徨わせてから小さくそうなんだ、と呟く。
掴まれたままの腕が少し痛くて自分の方に軽く引いてみる。
けれど力が緩むどころか逆に引っ張られてそのまま抱き締められた。


「俺は名前が好き」

「え?」

「名前、俺の事弟かなんかだと思ってるだろ。俺はずっと名前が好きだったんだよ」

「ちょっと待って」


言葉を上手く理解出来なくてジョージの体を押す。
予想に反して簡単に離れたけれど、手だけは繋がったまま。
見上げたジョージは真剣な表情をしている。
いきなりの事で正常に機能しない頭はかなりの役立たずだ。


「本気で言ってるの?」

「本気さ。嘘なんか言わない」


ジョージの顔が見ていられずに私の顔はどんどん下がる。
だって、私はジョージの気持ちには答えられない。
毎日ビルに会いたいと思いながら、手紙を楽しみに過ごしている私。
ジョージの事は本人も言った通り弟のような感覚だった。


「名前、俺諦めるつもりないから」

「え?」

「今答え聞く気もないし」


解りきってるし、と小さく呟いてジョージはふんわりと笑う。
空いている方の手で私の頭を撫で始めるジョージはなんだか楽しそうにも見える。


「とりあえず、覚えておいてくれるだけで良い」

「…解ったわ」




(20121117)
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