ホグズミードの日が貼り出されたのを見たフレッドとジョージが隣にドサリと座った。
二人ともクィディッチの練習が終わったばかりで、シャロンが置いていったクッキーに手を伸ばす。
一応シャワーを浴びたらしく、髪の毛が濡れたままだ。
「名前、ホグズミード俺と行かない?」
「いつもフレッドとリーと行くじゃない」
「だからだよ。一緒に行こう」
「フレッドは?」
「俺はシャロンと行くのさ」
何処から出したのかかぼちゃジュースを飲みながらフレッドが笑う。
動かしていた羽根ペンを止めてジョージを見ると真剣な顔で此方を見ている。
そんなに真剣にならなくても良いのにと思ったらおかしくて吹き出してしまった。
ご機嫌を損ねてしまったジョージの頭を撫でて頷く。
今度は喜んでいるジョージの方にスキャバーズとクルックシャンクスが走って来た。
けれどクルックシャンクスはジョージの手をすり抜ける。
その後ロンとハーマイオニーが喧嘩するのを見て私は深々と息を吐いた。
ハーマイオニーが居るかと思って図書館に来てみたけれど外れだったらしい。
昨日のロンとの喧嘩から恐らく仲直りしていないと思うのだけど。
せっかくだからとテーブルに課題を広げていたら本棚の影にプラチナ・ブロンドが見えた。
もしかして彼なりに隠れているつもりなのだろうか。
だとすると声を掛ける事が憚られて私は羽根ペンをインクに浸す。
すると彼が動く気配がしたので私は気付いていないフリをして文字を書き始める。
「名前、今、良いか?」
「ドラコね?どうぞ」
隣に座ったドラコの手には何もなく、彼は俯いていた。
私はレポートを書き進めながらドラコの言葉を待つ。
教科書と資料とを見比べて、書いて、また見比べて。
それでもまだドラコは俯いたまま。
そんなに言い出しにくい話なのだろうか。
手を止めようか悩み始めた時ドラコが顔を上げ、薄い青色の瞳が此方を向いた。
「名前、今度のホグズミード一緒に行かないか?」
「え?」
「ハロウィンに、あるだろう?まさか、まだ見ていないのか?」
ドラコが不安そうにしたので私は慌てて首を振る。
まさかドラコがホグズミードに誘ってくれるなんて思わなかった。
頷いてしまいたいのだけど、昨日ジョージと約束したばかり。
「ごめんなさいドラコ、もう約束しちゃって」
「…そうか」
「でもね、誘ってくれたのは嬉しい。また次の機会に一緒に行きましょう?」
「あぁ、解った」
申し訳ないと思いながらもドラコが素直に頷いてくれてホッとした。
片眉を上げて立ち上がったドラコは棚の奥へと消えていく。
レポートを再開して暫くすると人の気配がして隣に誰かが座った。
顔を上げるとドラコが本を手に座っている。
「邪魔は、しない。本を読むだけだ」
「何も言ってないわよ?」
「…O.W.Lはどうだったんだ?」
「ドラコが応援してくれたお陰で全科目パスしたわ」
「そうか」
満足そうに頷いてドラコは本に目を落とした。
いつもならば関係ないと言うのに、今日は珍しい反応。
私と話をして横で本を読む程度には心を許してくれているらしい。
その事に気分が上昇して、このレポートが捗る気がした。
(20121117)
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