医務室に駆け込むと其処にはマダム・ポンフリーとハグリッド、パンジー・パーキンソンが居た。
包帯を巻かれているドラコは痛みに顔を顰めている。
パーキンソンはキッと私を睨みつけて一歩前に出た。
「ちょっと!グリフィンドールが何の用よ!」
「パーキンソン!医務室で大声を出さないように!」
マダム・ポンフリーに一喝されて医務室から追い出されていく。
なんというか、甲高い声がキンキンとよく響く子だ。
ハグリッドは目に見えて落ち込んでいて、気の毒な程。
ドラコはこのまま医務室に泊まるらしく、ハグリッドは肩を落として医務室から出て行った。
ドラコのベッドの側に座り、包帯で巻かれた腕を見て私は溜息を吐く。
「ドラコ、私が聞いた話だと貴方がヒッポグリフを馬鹿にしたって聞いたけど」
「…説教するのか」
「して欲しい?」
無言で首を振ったドラコの頬を軽く引っ張ると自由な手で押さえて此方を見た。
薄い青色の瞳には不思議だと表れていて何を言おうか悩んでいるように見える。
「ドラコは頭の良い子だと思っていたけど」
「間違っていないだろ?」
「どうかしら?」
「…お前は僕を否定するのか」
「しないわ。して欲しくないならそれに見合った行動をしなさい」
額を指で弾いて私は医務室の出口へと向かう。
別にそんな事、とブツブツ言うドラコの声が聞こえる。
まあ、純血主義のドラコなら私に否定される位どうって事はないだろう。
なんていったって私は純血主義からすれば蔑むべき対象だ。
「…名前!」
「何?」
ドラコの声に足を止めて振り返るとパッと彼が俯く。
名前を呼ばれた事に少しだけ驚いた。
去年までは確かに名字と呼んでいたのに。
少しだけ顔を上げたドラコに首を傾げる。
「僕を…否定するな」
「しないわよ。言ったでしょう?私はドラコが好きって」
ドラコに手を振って今度こそ医務室を出た。
するといきなりパーキンソンが目の前に飛び出してくる。
相変わらず私を睨みつけていて、気に入らないという雰囲気が全身から出ていた。
自分より背の低い相手に睨まれたところで恐くもなんともないのだけれど。
「貴女ね、名前・名字。ドラコに構うのは辞めて欲しいわ。マグル生まれの穢れた血のくせに」
「私はそんな言葉気にしないわよ。それに、貴女に言われる筋合いはないわ」
「迷惑なのよ!」
「ドラコが言ったの?」
私の問い掛けにウッと言葉に詰まった彼女はソワソワと視線を逸らした。
まだ何か言うだろうか、と待ってみても何も言わない。
夕食の時間だし、とチラリと腕時計を見ると遠くから二つ声がした。
そちらに視線を向けるとフレッドとジョージが笑顔で此方に向かってくる。
「まだ何か言う事はあるかしら?」
「…」
「ドラコを好きなら私に構ってないでお見舞いでもしなさい」
パーキンソンの背中をトンと押して、フレッドとジョージの方へ歩き出す。
二人は不思議そうにパーキンソンと私を見比べる。
何でもないと告げると二人は直ぐに前を向いた。
(20121114)
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