監督生の車両に入るとパーシーとペネロピーが既に座っていた。
私に気付くととても今まで知り合いだったとは思えないような挨拶をしてくる。


「パーシー、あの、からかってるの?」

「そんな訳ないでしょう!僕が名前をからかうなんて」


じゃあなんだって言うんだと首を傾げるとパーシーのローブにはバッジがしっかり輝いていた。
私がバッジを見ている事に気付いたパーシーはよく見えるようにふんぞり返る。
後ろで此方を窺っていたペネロピーと目が合うと彼女が苦笑いした。


「パーシー、首席おめでとう。でも、その対応は嫌だわ」

「…解ったよ」


パーシーは渋々と頷いてペネロピーの横に再び収まる。
外で汽笛が鳴り、ゆっくりとホグワーツ特急が動き出した。




やっと見つけたコンパートメントに居たのはフレッドとジョージ、シャロンにジニー。
すぐさまフレッドとジョージに腕を引かれて間に座らされる。
シャロンはジニーの髪の毛を三つ編みにして遊んでいた。


「エジプトはどうだった?」

「楽しかったよ。ビルの部屋以外はね」

「ビルの部屋?」

「写真立て!」


ムッとしながらそう言ったフレッドに私は首を傾げる。
ビルの部屋に写真立ては確かに飾ってあった。
私がプレゼントしたものと恐らくビルが自分で買ったもの。
それが何だというのだろう、と不思議な私にジニーはクスクス笑い出す。


「私、ビルの制服姿、久しぶりに見たわ」

「制服姿?ああ、もしかしてビルとの写真を見たの?」

「それは前にも見たよ。ビルったら名前の写真飾ってるんだ!」

「確かにビルが撮った写真かもしれないけど」

「……え?」


私の写真でしかもビルが撮った写真なんてたった一枚しか思い当たらない。
他はチャーリーかシャロンが撮った写真位しかない筈。
となるとやっぱりジョージの言うビルが撮った写真は、あの写真?
カッと顔に熱が集まるのを自覚して自分の頬を押さえる。
きっと嬉しさと恥ずかしさで顔は緩んでしまっているだろう。


「名前、俺達とも写真撮ろうぜ」

「そうだ!ビルばっかり狡い!」

「写真撮ったじゃない。チャーリーが居る時」

「私は名前と撮ってないわ!」


ジニーがバッと此方を向いたのでシャロンの手から髪の毛が滑り落ちた。
フレッド、ジョージ、ジニーの三人に見つめられている。
シャロンを見ると苦笑いをするだけで助けてはくれないらしい。
コリンに頼もうかと呟けば三人が大喜びし出す。


ジニーがロン達の所へ向かうというのを見送って私はシャロンの隣に移動した。
お菓子を買い込んだ三人は百味ビーンズで遊んでいる。
列車の揺れが心地良く、ウトウトとしてしまう。
外は激しい雨が降っていて景色はとても見えなかった。
不意に灯りが消えて辺りの気温が下がる。
ウトウトしていた意識を持ち上げて杖を構えた。
バタバタと誰かが飛び込んできて私の片腕にしがみつく。


「助けて!」

「あら、その声ドラコ?」

「マルフォイ?」


フレッドとジョージが声を上げる前に何かが入ってきた。
大きくて真っ暗で本で読んだ事がある、ディメンター。
深呼吸をしてから呪文を唱えると銀色の鼬がディメンター押しやる。
しがみついているドラコの頭を撫でると幾らか安心したようだった。
暫くすると再び灯りが点いてお互いの顔が見えるようになる。


「皆、大丈夫?」

「大丈夫よ。それより、やっぱりマルフォイなのね」

「マルフォイ、名前を離せよ」

「その前に皆チョコレートを食べるのよ」


フレッドとジョージ、シャロンは素直に食べてくれた。
問題はドラコで、恥ずかしさからか食べようとしない。
相変わらず私の腕にしがみついているままだけれど。
仕方無くドラコの口元にチョコレートを持って行くとやっと食べてくれた。


「甘えん坊だな、坊ちゃん」

「さすが、育ちが良いんだな、マルフォイ家は」

「僕を馬鹿にするな!」


入ってきた時と同じようにバタバタと出て行くドラコ。
あれだけ元気があるのならば大丈夫だろう。
私だってディメンターに出会った後でチョコレートが正しいのか解らない。
所詮は本で得た知識で実体験に伴う物ではなかった。




(20121114)
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