「マルフォイが!?」

「うん」


談話室でロンとハリーを見つけ、何気なくドラコとの事を話した。
二人ともこれでもかという程驚いて口が開いたまま。
気にせずロンのレポートの綴りを直す為に杖を振る。


「有り得ないよ!マルフォイだよ?名前はマグル生まれじゃないか」

「ドラコは良い子だわ。ロンが知らないだけ」

「良い子だって?そんな筈ないよ」

「僕もちょっと信じられないな」


ボソッと呟いたハリーから有り得ないという表情のロン。
苦笑いを浮かべて見直したレポートをロンに返す。
今は医務室に居るハーマイオニーも同じ反応をするだろうか。
ビルならきっと、笑って頷いてくれる気がする。


「ドラコを嫌い?」

「嫌いだよ!あんなやつ!」

「ハリーも?」

「嫌なやつだよ。ハーマイオニーをどう言ってるか、知ってるでしょ?」


ハリーの言葉には苦笑いで頷くしかなかった。
ドラコは確かにハーマイオニーの事を差別している。


「マルフォイと僕等どっちの味方なんだよ」

「どっちもよ」

「どっちも?本当は名前は純血に憧れてるんだ!」

「そんな事ないわ」

「だからマルフォイの味方なんだろ?」


ロンは明らかに怒っていて、小さく裏切りだとまで呟いた。
そういうつもりじゃないのに今のロンは聞いてくれそうもない。
ハリーも驚いてロンを見つめている。
乱暴に荷物を纏めると階段を登っていった。
苦々しく溜息を吐いて頬杖をつく。


「名前が純血に憧れてるなんて、僕は思わないよ」

「有難うハリー」

「でも、マルフォイは嫌い」

「うん。それでも良いのよ。仕方ない事だもの」


ハリーが差し出したレポートを受け取る。
所々直しながらまた少しだけ溜息を吐く。
こんな時、ビルやチャーリーが居てくれたら、と思う。
けれど二人は今海外でそれぞれ仕事をしている。
私は今ホグワーツの五年生で、監督生にもなった。
いつまでも二人に頼っていてはいけない。


「こっちとこれを直せばOKよ」

「有難う名前」


早速羽根ペンを持ったハリーを見ながら双子を思い出す。
あの二人よりも素直に課題をやってくれるハリーは教え甲斐がある。
ロンはもう少し自分でやってくれると助かるのだけど。
ハーマイオニーも苦労しているのだろう。


「去年、名前と居る時にマルフォイと鉢合わせした事があったよね?」

「あったかしら…あ、ガールフレンドの話ね」

「あの時、マルフォイは名前に何も言わなかったよね」

「良い事覚えてるわハリー」


不思議そうに瞬きをするハリーにドラコの事を話す。
ドラコは私を穢れた血と呼んだ事はない。
影ではどうかは解らないけれど。
難しい表情を浮かべてからハリーは眉を寄せた。


「やっぱり信じられないなぁ」

「ハリー達の前では違うみたいね」


頷いてハリーは直し終えたレポートをくるくると巻く。
どうしたって伝わらない事や時もあるのだ。
いつか、本当の優しいドラコを見られたら解る筈。
まだまだ先は長くて、来るか解らないけれど。
荷物を纏めて立ち上がったハリーは二、三歩進んだと思ったら振り向いた。


「ロンは、名前を好きだよ。きっとそのうち仲直りしたいって言い出すよ」

「解ってるわ。有難う」


満足そうに笑って挨拶をするハリーに私も挨拶を返す。




(20121104)
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