図書館は五年生が沢山居て、パーシーとペネロピーが並んで座っていた。
私に気付いたペネロピーが手を振ったので私も振り返す。
空いている窓際の席を見つけて私は羊皮紙やインク瓶を取り出した。
ビルに貰った手帳も取り出して表紙を開く。
笑顔の写真を見て、私はこっそり笑顔を浮かべた。
ビルの写真と御守りのペンダントで頑張ろうと思える。
手帳を閉じて持ってきた本を開く。
O.W.Lの勉強はのんびりと、けれどしっかりやる。
一応チャーリーの時に話を聞いていたし、ビルにもコツを教えて貰った。
あとは私がどれだけ頑張れるか。
「此処、良いか?」
「ドラコ?どうぞ」
隣に座ったドラコは直ぐに本を開き文字を追い始める。
去年もこんな事があったけれどもっと人が少なかった。
こんなに賑やかな時に良いのだろうか。
私としては充分に嬉しいから良いのだけど。
ふう、と小さく息を吐いてから伸びをする。
ずっと文字を書いていたせいで少し指が痛い。
隣を見ると薄い青色の瞳が此方を向いていた。
「…O.W.Lか」
「そうよ。ドラコは三年後ね」
「僕にちょっかい掛けてる暇があるんだ。さぞかし余裕なんだろうな」
「余裕かどうかは解らないけどね」
ドラコは私が持ってきた本に手を伸ばし、パラパラと捲る。
それを眺めながら私は杖をくるくる回す。
今カメラがあったらシャッターを切るのに。
「クッキー、美味かった」
「受け取ってくれたのね」
小さく首を縦に動かしたドラコの頭を撫でる。
拒否しなくなった事が嬉しくて笑顔を浮かべた。
ドラコから手を離し、再び羽根ペンを握る。
すっかり本を読み始めている彼は無言。
再び羽根ペンを動かし始めると再び静かになる。
隣から偶にドラコがページを捲る音がするだけ。
全ての本をチェックし終え、鞄に羊皮紙やインク瓶をしまう。
本を戻そうと抱えようと腕を伸ばすと隣からも腕が伸びてきた。
「手伝ってくれるの?」
「…早くしろ」
半分以上持ち上げたドラコはさっさと歩いて行ってしまう。
残りの本を抱えて慌ててドラコを追いかける。
図書館を出ると廊下に立っている彼が此方を見ていた。
「ドラコ?」
「…一人だと、危ないだろう」
「え?」
理解の追いつかない私を置いて歩き出す。
ドラコの言葉を考えるのならばつまりは送ってくれるのだろうか。
見下ろす形になる横顔は何の表情も浮かんでいない。
「ドラコ、私上級生だし、監督生なんだけど」
「そんな事知っているさ」
「ドラコこそ危ないわ」
「僕は純血だ」
「そうなんだけど」
「…僕じゃ不満か」
拗ねたような声色になったドラコに首を振って否定する。
不満だなんてとんでもない事だ。
寮まで送ってくれるなんてこの先あるか解らない。
緩む顔をそのままに眺めていたら彼の眉間に皺が出来てしまった。
授業やクィディッチの事を話しながら階段を登る。
話すと言っても私が話しかけてドラコがポツリと答えるだけ。
それでも普通に会話をしてくれるのならそれで充分だ。
「そうだわ、ドラコに渡そうと思って…ちょっと待ってね」
鞄を探り、目当ての包みを出して差し出す。
包みをジッと見つめてから受け取ったドラコは立ち止まって開き始めた。
エジプトでビルと出かけた先で見つけて思わず買ってしまった物。
「ドラゴン?」
「エジプトで一目見てドラコだ!って思ったわ。バッジなら、鞄とかに付けられるでしょう?」
「…貰っておいてやる」
そう言いながらふんわり微笑んだドラコに私は言葉が出なかった。
直ぐにいつもの表情に戻ってしまったけれど。
(20121104)
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