楽しい時間とビルと過ごす時間はいつでもあっという間だった。
現像した写真を見ながらぼんやりとエジプトを思い出す。
どれも未熟な自分で撮ったにしてはなかなかの出来だと思う。
けれど、中でもお気に入りはやっぱりビルの笑顔の写真。
ビルが撮った私の写真はちょうど紅茶を飲んでいて顔が半分隠れている。
これを欲しいというのだから勿論用意はしたけれど複雑な気持ちだ。
「名前!」
「お帰り。帰ってくる頃だと思ったよ!」
「フレッド、ジョージ、ただいま」
ワッと近寄ってきた二人は私の隣に座り込む。
そして手元を覗き込もうとしたので慌てて写真を隠す。
けれど相手は二人で、しかも双子で見事な連携で結局奪われてしまった。
一番上になっているのがよりによって笑顔のビルの写真なのに。
「ビルだ」
「これ、ビルの部屋?」
「そうよ」
「名前、これ動いてないよ」
「マグルのカメラで撮ったのよ」
「ふぅん…変な感じ」
取り返す気も失せて私はクッションを抱え込む。
エジプトの風景の写真にああだこうだ言いながら二人は楽しそうだ。
本も全て部屋に置いてきてしまったし、正に手持ち無沙汰。
「あ、名前だ」
「これ、ビルが撮った?」
「うん。不意打ちでね」
「ふぅん」
「可愛いなー、名前。なあ、ジョージ」
問いかけにジョージは返事をせずジッと写真を見つめている。
隣からフレッドが突つくのも気にせず何も言わない。
その隙にフレッドから写真を取り戻してビルの写真を確認する。
「名前、この写真貰って良い?」
「え?良いけど、私しか写ってないわよ?」
「うん」
「顔半分よ?」
「良いんだ。有難う名前」
ふんわり笑ってジョージは足早に寮へ登っていく。
後ろ姿を見送ってフレッドを見るとジッと此方を見つめている。
「俺には?」
「あ、一枚しかないの」
「まあ、なんとでもなるけどね」
ウインクをしてフレッドも寮へと登っていく。
入れ替わるようにシャロンが隣に座った。
手に本を持っているという事は図書館に居たのだろう。
「お帰りなさい名前。エジプトはどうだった?」
「良かったわ。あ、ビルがシャロンによろしくって」
「あら、相変わらずビルが好きなのね」
私の手元の写真を見たシャロンはニヤリと笑う。
慌てて隠したい気持ちとビルの笑顔を見せたい気持ちが入り混じる。
誤魔化すようにシャロンに抱き付くと優しく頭を撫でられた。
「私、O.W.L頑張れるわ。ビルに御守りも貰ったのよ」
「御守り?」
首を傾げるシャロンに、私はポケットから小さな箱を出す。
これは別れ際にビルが渡してくれた物で、まだ開けていなかった。
なんだか勿体無くて開けられなかったのが本音。
そっと開けると中からはペンダントが出て来た。
ペンダントトップはブルーオニキスとブラックオニキス。
「綺麗ね」
「シャロン、私こんなのだって思わなかったわ!」
「良かったじゃない」
「うん!」
早速ビルにお礼の手紙を書かなければ。
(20121104)
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