ふわふわとする頭にこれはもしかしたらという可能性が浮かぶ。
ハロウィンが過ぎてからグッと寒くなったのが原因だろう。
こんな事ビルに知られたら怒られてしまうと判断した私は朝から一人行動だ。
幸い今日は土曜日で授業に支障を来さないのは嬉しい事。


「嘘でしょ」


足を乗せた瞬間気まぐれな階段は動いてしまった。
戻って待っても良いのだけれど、なんとなく足を進める。
この状態でフレッドとジョージに遭遇なんてしてしまったら大変だ。
今の私は相手をしてあげられる元気はない。


階段を登りきって廊下に出ると辺りを見渡してみた。
見覚えがあるような気がして記憶の中を探し回る。
暫く立ち竦んだまま考えていた私は一つの記憶に辿り着く。
ビルの卒業の前日一緒に来たのだから見た事がある筈だ。
あの不思議な部屋は確かこの先にある。
記憶を頼りに歩いていくけれど、扉は見つからない。
おかしいなぁと暫く周辺を歩き回っていると扉が見つかった。


「お邪魔します」


もしかしたら誰か居るかもしれない、と一応ノックと声を掛ける。
扉を開けると寮の部屋とそう変わらない部屋が現れた。
但しベッドは一つしかなくミニキッチンが備え付けられている。
ビルと来た時は机といつの間にか現れた蓄音機だけだった。
もしかして誰かの部屋に迷い込んでしまったのかもしれない。
回れ右をして扉に手を伸ばそうとしたら勢い良く開く。
もう少しでぶつかりそうだった手を慌てて引っ込めた状態で扉を開いた主を見る。


「ドラコ?」

「無事か!?」


慌てた表情と言葉に首を傾げて、それでも質問の答えにと頷く。
ホッとした顔になったドラコは部屋を見渡して眉を寄せた。
ドラコは緑とシルバーのユニフォームを着て片手には箒を持っている。
クィディッチの練習をしていたのだろう、髪の毛が少し乱れていた。
それならば彼は寮に帰る筈なのにどうして此処に居るのだろう。


「ドラコ、どうして此処に?」

「お前が一人でフラフラ歩いているから…倒れられても困るだろう。いつもはオルコット達が居るくせに。それに、部屋に入ったと思ったらその扉が消えそうになるし」

「ええと、つまり、心配してくれたの?」


そう問うと途端に顔を赤くして否定をするドラコ。
嬉しくない筈がなく、ドラコの首に腕を伸ばして抱き締める。
つもりだったのだけれど眩暈に襲われてそのままベッドに倒れ込んだ。
腕の中で慌てていたドラコはするりと解けた私の腕を眺めている。


「おい、お前」

「私お前じゃないわ」

「名字…体調が良くないのか?」

「ちょっとね」


深めに息を吐いてくらくらする視界をやり過ごす。
恐らく高熱ではないし、少し眠れば治るだろうか。
それよりドラコに大丈夫だと言わなければ。
まだ僅かにくらくらする頭を動かすと額に手が当てられた。


「…微熱だ。こんな状態で出歩くな」

「優しいわね、ドラコ。少し眠るから、帰って良いわよ?」


そっぽを向いてしまったドラコにそう告げて私は瞼を下ろす。




(20121024)
101
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -