課題をやろうと図書館に来てみればチャーリーが一人座っていて、手招きをされる。
向かい側に座るとチャーリーは教科書などを横にどかしてくれた。
チラリと見えた教科書は私にはまだまだ到底先の内容で見ただけで難しそう。
「課題か?」
「うん。今日談話室が何だか騒がしくて」
「もうすぐハロウィンだからな」
曖昧に頷いて教科書を開くと目当てのページまでパラパラと捲る。
チラ、とチャーリーを見れば目が合って吃驚してしまう。
てっきりレポートを書いているかと思っていたのに。
驚いた拍子に閉じてしまった教科書をまた捲りながら目だけで何?と尋ねる。
「名前、ビルが好きなんだろ?」
またしても驚いて今度は教科書が机から落ちて大きな音を立てる。
ちょうど後ろに居たらしいマダム・ピンスの咳払いが聞こえて私は慌てて教科書を拾い謝った。
チャーリーは笑いを堪えているらしく肩が小刻みに震えている。
思わず軽く睨みつけるとごめんごめんと言いながら両手をひらひらさせた。
「まさか、そんな反応するなんて思わなかった」
「だって…でもどうして?」
「解るさ。名前、ビルの前だと嬉しそうだぜ」
ふとこの間のクィディッチの試合の日を思い出す。
あの時の言葉はやっぱりそういう意味だったらしい。
なんというか、隠していた訳ではないと思うのだけど、複雑な気分だ。
「あの、チャーリー、ビルには」
「言ってないよ、勿論」
その言葉にホッと息を吐いて、私はまだインク壷の蓋も開けてない事に気付いた。
蓋を開けて羽根ペンを浸すと羊皮紙の一番上にタイトルと自分の名前を書く。
しかし、まだチャーリーが此方を見ているような気がして顔を上げる。
やはりチャーリーが此方を見ていて、その顔には複雑な表情が浮かんでいた。
「名前も解ってると思うけど、ビルはモテるよ」
「うん。チャーリーは、ビルの弟として、反対?」
「いや、別に反対なんかしないよ。年の差だって、そんなに気にする事じゃない」
チャーリーは真面目な顔できっぱりとそう言った。
それからふわりと笑って応援するよ、と言ってくれる。
嬉しくて私はチャーリーにお礼を言うといつものように頭を撫でられた。
「あ、そうだ。チャーリー、これ有難う」
「おう。どうだった?試合もだけど」
「面白かった。クィディッチって素敵」
「そうだろ?」
クィディッチの話で盛り上がっているとチャーリーの後ろに恐ろしい顔をしたマダム・ピンスが立っていた。
慌てて二人で荷物を纏めて図書館を出るとお互いに顔を見合わせて笑う。
「仕方ない。談話室に行こう」
「うん」
「ビルが居るかもしれないしな」
悪戯にウインクするチャーリーに私は言葉が出ない代わりに杖で脇腹をつつく。
(20120625)
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