「おーい、お前等手洗えよー」
きゃあきゃあ騒ぐ子供達に声をかける。
大体の子は素直に手を洗ってくれるのだけど、そうもいかない子が何人か。
騒いでいる顔を見て、あぁまたか、と溜息を吐く。
「こらジェームズ!手洗えよ」
「シリウス先生、先生が洗わないのに僕達には洗わせようとするのかい?いけないね、先生は子供達のお手本となるべきだろう?」
「解った解った。じゃあ一緒に洗うぞ」
「嫌だよ。僕はリリーと手を洗うんだ」
「…っ!」
イライラを一生懸命に抑えてジェームズの後ろ姿を見送る。
気分を落ち着かせようと息を吐きながら手を洗う。
近くにあるタオルで手を拭いていると遠くの方に見えるリリーに怒られているジェームズの姿。
今からあんなに嫌われてしまって将来どうするのだろう。
成長したジェームズとリリーを想像して溜息を吐きたくなった時、服を引っ張られる。
見下ろすと、名前が此方を見上げていた。
しゃがんで目線を合わせると名前は手を開く。
「どうした?」
「シリウス先生、手洗ったよ」
ニコニコ笑いながらちゃんと手を洗った報告をしてくれる。
いつも報告してくれる名前はとても可愛い。
頭を撫でながら褒めると更に嬉しそうに笑った。
あぁ可愛い。目に入れても痛くないんじゃないだろうか。
「シリウス先生、名前を見て鼻の下を伸ばさないでくれるかな?僕のリリーが嫌がっているんだよ」
「名前で呼ばないでポッター!」
「ジェームズもリリーも、シリウス先生は優しいよ」
名前だけが味方をしてくれるのもいつもの事。
目の前でリリーは名前にベッタリだしジェームズはリリーに近寄ろうとして嫌がられているし。
リリーの腕の中で笑う名前だけが天使に見える。
子供が好きでこの仕事を始めた筈なのに、不思議だ。
「リリー!おままごとなら僕幾らでも付き合うよ!」
「そうね。じゃあ一言も喋らないで」
「お安いご用だよ!」
こんな会話が日常的に行われていると溜息も吐きたくなるって物だ。
ポカンとリリーとジェームズのやり取りを見ている名前を抱き上げる。
「あの二人は楽しく遊んでるから俺と遊ぼうな」
「うん!一緒にお絵描きしよう」
可愛い子供というのはやっぱり名前の様な子だと思う。
(20120405)
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