勉強を始めるのは良いけれど、何でもやり始めは慣れなくて直ぐに辞めたくなってしまう。
おまけに余り好きじゃない国語の勉強だからか楽しくなくて進まない。
何においても興味が無い事をやらないといけないというのは楽しくないものだ。
とりあえず次のテストで順位を上げなければいけない。
シャープペンシルをくるくる回して溜息を吐く。


窓の外に目を向けると運動部が練習しているのが見える。
勉強と部活動とどちらが大変だろう。
なんて下らない事を考えて教科書とノートを閉じた。
部活動には部活動の、勉強には勉強の大変さがあると言うのに。


頭を使うと何故か甘い物が欲しくなる。
何か買おうと購買に向かうと自動販売機の前に坂田先生が居た。
今日もやる気がなさそうに見えるのは変わらない。
私の足音に気が付いたのか坂田先生の目が此方を向いた。


「まだ残ってたのか」

「勉強してました。でも今日はもう帰ります」

「ふぅん」


坂田先生はやっぱり興味なさそうな返事をして自動販売機を眺めている。
私も買いたいのに、と思いながら坂田先生を待つ。


「なあ、甘いのと甘くないのどっちが好き?」

「甘くない方が好きです」

「甘くない方ね」


何でいきなりそんな事を聞いてきたのだろうと内心首を傾げていたら坂田先生の指がボタンを押した。
紙パックが落ちてくる音がしたのにそれを取りだそうとはせずもう一度ボタンを押す。
二回目の音を聞きながら紙パックを取り出す姿を眺めていたら茶色の紙パックが差し出された。


「やるよ。買いに来たんだろ」

「……有難う御座います」


坂田先生の手の中には見慣れたピンク色の紙パック。
甘い物、なんて珍しく考えていたけれどあのピンク色の紙パックは求めている以上に甘い。
珍しい事を考えたものだと思いながら紙パックに付属のストローを挿す。


「先生、今日は暇なんですか?」

「ああ、暇じゃなかったような、暇でもないような」

「……サボりですか?」

「ちげーよ。休憩だ、休憩」


ストローをピンク色の液体が流れていく。
休憩と言いながら坂田先生はゆっくりと歩いている。
きっとやらなきゃいけない事があるんだろう。
なんて思っていたら校内放送が流れた。
隣からは舌打ちが聞こえてくる。


「先生、呼んでます」

「名字、代わりに行かない?」

「私が行っても役に立たないですよ」

「やっぱり?」


面倒だな、と呟いて坂田先生はストローに口を付けた。
同じ様にストローに口を付け、甘いカフェラテを飲み込む。
飲みながら坂田先生を見ていたら目が合ってしまった。


「もう帰るんだろ?」

「はい。勉強も捗らないので」

「気を付けろよ」


坂田先生はそう言うとひらひらと手を振って今歩いてきた方向へ歩き出す。
遠回りをして会議に行くんだろうか。
白衣の背中にさようならと声を掛けて校門へと向かう。
明日こそは勉強を頑張ろう、なんて考えてみる。
それにしても、このカフェラテは本当に甘い。




(20161106)
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