その日は、久しぶりに雪が降った。
雪を見て思い出すのはやはり名前の事。




「名前!」


帰り道、倒れている人が居た。
不思議と遠くからでも名前だと解る。
近寄って様子を見れば、気を失っているらしい。


家へと連れて行き、寝かせる。
久しぶりに会った名前は、以前より顔が白い。
そっと触れた頬は凄く冷たくて驚いた。
窓の外では再び雪が降り出している。


「…夏目様」


小さな声に呼ばれ、窓から目を戻せば名前の瞳が此方を見ていた。


「名前、寒く無いか?」


一応布団に寝かせているものの、今日は冷える。
しかし、名前は首を横に振り、一言暑いと言った。
こんなにも冷たいのに暑いだなんて。


「夏目様」

「ん?どうした?」

「ごめん、なさい」


そう呟き、再び名前の瞼は降りた。
相変わらず触れている手は酷く冷たい。




(20090219)
落ちる、春 4
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