名前に言われた通り材料を切っていたら思わず口からあーあと声が出た。
鍋をかき混ぜていた名前が顔を上げて笑う。


「何か悩み事?」

「そうじゃないよ。ただ、休みはあっという間に終わっちゃうなって思って」

「そうね。楽しい事はあっという間だわ」


明日にはホグワーツに戻らなきゃいけない。
また暫く名前には会えなくなってしまう。
切り終わった材料を名前に渡して鍋を覗き込む。


「これはもう直ぐ完成?」

「ええ、完成。瓶取ってくれる?」


いつもの瓶を渡すとその中に魔法薬が入れられていく。
それに蓋をしていくと名前が杖を振って外れないようにする。
この休暇の間に何回も手伝っていたからその呪文もバッチリ覚えた。
今は魔法が使えないからホグワーツに戻ったら試してみよう。


「今日は終わり。お手伝い有難う」

「いつでも手伝うよ!」

「頼もしいわ。でも荷造りは良いの?」

「荷造りは今日の夜にやるよ」


トランクからあんまり物を出してないし、直ぐに終わる。
新しく増えた物といえば毎年ママが編むセーター位だった。
仕事部屋からキッチンに移動する名前に付いて行く。
名前は仕事が終わると必ずティータイムにする。


「今日はスコーンを作ったのよ。上手くいってると良いんだけど」


魔法薬は凄く上手に作るのに名前はお菓子作りは苦手らしい。
前にクッキーを作った時は何の味もしなくてマーマレードを塗って食べた。
苦手でも作るのは好きみたいで、ママに作り方を聞いたりしている。
でも名前は料理は上手だから凄く不思議だ。


「美味しいよ」

「そう、良かったわ」


嬉しそうに名前がママに教えて貰ったんだと話す。
そういえばクリスマスに何か聞いていた。
名前が見せてくれたメモには作り方が細かく書いてある。
スコーンにジャムを塗りながらママのおかげだって名前が笑った。


「夏休みまでには美味しいクッキーが焼けるようになると良いんだけど」

「楽しみにしてるよ」

「頑張って練習しなくちゃ。もし上手くいかなかったらその時は手伝ってくれる?」

「うん、勿論」

「有難う」



楽しい時間はどうして早く過ぎてしまうんだろう。
もう家に帰らなきゃいけないし、次に名前に会えるのは夏休みだ。
帰りたくないけど帰らなきゃママが怒る。
此処に居るのはママは知っているし、帰るしかない。


「夏休みまでなんてあっという間よ」

「そうかなぁ……まだ春があるんだよ」

「春はテスト勉強で忙しくなるわ」

「テスト……そっか、テストがあるんだ」


早く夏休みになって欲しいと思っていたけど、テストは不安だ。
初めてのテストだし、良い点数を取れるか解らない。
きっと名前が言った通りにテスト勉強で忙しくなるんだろう。


「テスト難しいかな?」

「ちゃんと勉強すれば大丈夫よ」

「僕頑張るよ」


また夏休みにね、って挨拶をして名前の家を出る。
暫く歩いてから振り返るとまだ名前が立っていて手を振ってくれた。




(20150831)
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