「名前ー遊ぼーよー」

「遊ぼーよー」


名前が家に来るとやっぱりこうなる。
確かにお客さんが来ると僕だって楽しい。
でも名前と話せないとやっぱりつまらないと思う。
何でそう思うのかは解らないけど。


「じゃあフレッドとジョージ、これ位の紙を用意してくれる?」

「何枚?」

「僕とジョージの分?」

「兄弟皆の分。お願いね」


返事をしてフレッドとジョージが走り出す。
それに気が付いたママが怒って驚いたジニーが泣く。
いつもと全く変わらない。
ママがジニーをあやしていると羊皮紙を持ってフレッドとジョージが戻ってきた。


「二人とも有難う。じゃあ皆一枚ずつ持ってね」

「これで何するの?」

「絵でも書くの?」

「フレッド、ジョージ落ち着いて。私の真似してね。ロンは一緒にやりましょう」


名前が羊皮紙を折り始めて兄弟全員で真似をする。
何回か折って出来上がったのは紙飛行機だった。
パパが見せてくれた魔法省で使っているのとは少し形が違う。


「名前、これ飛ばすの?」

「あら、ビルは知ってるのね。皆外に行くわよ」


皆ローブを着てマフラーを巻いて外に出る。
フレッドとジョージと手を繋いだチャーリーが先頭。
パーシーが少し遅れて行き一番後ろをロンと手を繋いだ名前と僕。
足跡を付けながら先頭の三人が進んでいく。
果樹園まで来ると名前が皆の紙飛行機に向かって杖を振った。


「魔法で飛ばすの?」

「防水呪文をかけただけ。皆斜め上に向かって飛ばすのよ。一番遠くに飛ばせたら勝ち」


皆で紙飛行機を飛ばすけど直ぐに地面に落ちてしまう。
頑張って、と笑いながら名前がベンチに座る。
何回も何回も飛ばしていると皆上手くなってきた。
特にチャーリーが上手で一番遠くに飛んでいく。
それに勝とうとフレッドとジョージとロンが頑張っている。
パーシーは何か考えているみたいで紙飛行機と睨めっこしているばかり。
バレないようにそっと抜けて名前の座っているベンチまで歩く。


「ビル、どうしたの?」


名前はいつの間にか羊皮紙の束を持っていた。
見慣れたその束には魔法薬の名前がいっぱい書いてある。
隣に座ると名前が杖を振ってココアを出してくれた。


「ビルにはつまらなかったかしら?」

「ううん、そうじゃないよ」

「そう。じゃあ、ちょっと休憩ね。アーサーさんが持ってきてくれたわ」


そう言って名前が僕に差し出したのはママが作ったクッキー。
それを口に入れて紙飛行機で遊ぶ弟達を見る。
いつの間にかチャーリーがやり方を教えていた。
勝負は少しの間休憩になったらしい。


「名前、家に来るの楽しい?」

「そうね。賑やかでとっても楽しいわ」

「僕も名前が来てくれると嬉しいよ」


フレッドの喜ぶ声が聞こえて見てみるとチャーリーの紙飛行機より遠くに飛んで行く。
皆で紙飛行機を追いかけ始めて名前が転ばないように気を付けてと言った。


「兄弟が沢山居るのって楽しそうね」

「名前は兄弟居ないの?」

「弟が一人。チャーリーと同じ年よ」

「そうなの?」


名前がチャーリーを見ながら頷く。
そういえば名前の家族の話は聞いた事が無い。
おじいちゃんが居るのは手紙を見て知っていたけど。
家に家族の写真も飾っていなかった。
どうして今まで気にしなかったんだろう。


「弟には、クリスマスプレゼント送ったの?」

「……そうね、お花を贈ったわ」


名前の弟は花が好きなのかな。
気になったけど、ロンの泣き声が聞こえてきて名前が駆け寄って行って聞けなかった。




(20150816)
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