「名前、僕も遊びに行って良い?」

「僕も!」

「もう少し大きくなったらね」


名前が来てくれたのは嬉しいしママ達と話をするのも解ってた。
でも弟達が名前にずっと話し掛けているのは完全に予想外。
チャーリーにフレッドとジョージは遊びに行きたいと繰り返してパーシーは魔法薬の本を持って周りをうろうろしている。
小さなロンは眠いみたいでフォーク片手に頭がゆらゆらと揺れていた。


「ビル、ちょっとジニーを見ていてちょうだい」

「はーい」


もう直ぐ一歳になるジニーは可愛い可愛い唯一の妹。
最近歩けるようになってから何でも口に入れてしまう。
膝の上に乗せたジニーが抜け出そうと暴れる。
それを阻止するのもすっかり上手になったと思う。
パーシーから下の兄弟の面倒を見ていたおかげだ。


「貴方達、そんなにずっと話し掛けていたら名前がお食事出来ないでしょう?」

「大丈夫です。ちゃんと食べてます」

「でも、騒がしくて落ち着かないでしょう?」

「いえ、いつも一人なので楽しいです」


そう言いながら名前はサラダを食べる。
名前の言葉にあの二階建ての家を思い浮かべた。
あの家で毎日一人で食べるご飯はどんな味がするんだろう。
生まれてからずっと家族が一緒だった僕には解らない。
パパとママと三人だった時もいつも一緒だった。
チャーリーが生まれて、パーシー、フレッドとジョージ、ロン、そしてジニー。
どんどん賑やかになって静かだった事なんて無くて一人で食べるなんて考えなかった。
考えてみても、体験した事が無いからよく解らない。
いつか僕も一人で暮らすようになるんだろうか。




ダイアゴン横丁から帰って荷物を部屋に運んでママに見つかる前に家を出た。
今日はしっかり閉まってるドアをノックして声を掛ける。
暫くしてドアが開いて名前が出て来た。


「あら、ビル。走ってきたの?」

「ママに見つからないように急いで出てきたから」

「まあ。モリーさんに見つかったら怒られちゃう」


そう言っても名前は中に入れてくれる。
いつもみたいにキッチンに行ってジュースを貰った。
名前が暖炉に火を点けたのを見て首を傾げる。
そういえば家の中なのに着ているのは外出用のマント。
そのマントを脱いだ名前が着ていたのはドレスローブだった。


「名前、綺麗」

「有難う。そんな事言ってくれるのはビルだけよ」

「そうなの?」

「今日の主役は私じゃないから」


名前は着替えてくるねと言ってキッチンを出て行く。
主役じゃないって事はパーティーだったのかな。
パパとママがドレスローブを着た時の事を思い出す。
結婚式に行くからって僕も同じようにドレスローブを着た。
名前は結婚式に行ってきたのかもしれない。
用意してくれたクッキーをかじっていたら名前が戻ってきた。


「今日はダイアゴン横丁に行ったんでしょう?」

「うん、そう。これを見せたくて来たんだ」


ポケットから出した買って貰ったばっかりの杖。
選ぶのに少し時間が掛かったけど、僕にピッタリの杖だった。


「立派な杖ね」

「早く使ってみたいな。でも、ママに駄目って言われちゃった」

「じゃあ、入学まで少し我慢しなくちゃ」


もう少しなのに、楽しみで楽しみで待ちきれない。
ホグワーツに行くのも沢山の事を勉強するのも。
今みたいに名前と直ぐに会えなくなるのは寂しいけど。
クリスマスと夏休みは帰ってきて絶対遊びに来よう。




(20150412)
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