夏が過ぎ、秋もいつの間に通り過ぎ、城の外は真っ白な雪で埋め尽くされている。
名前が気負わずにやれば大丈夫と言ったのがもう随分前な気がしてくる程毎日が目紛しく過ぎて行く。
乾かしているレポートを何枚も前にしながら息を吐いた。
ずっと文字を書いていたせいで羽根ペンを持っていた指が痛い。


談話室には数人同じようにレポートをやっていたり、復習と予習をしている生徒が居る。
共通するのは疲れ切っているところだろうか。


「ビル、終わった?」

「終わった」

「これでクリスマス迎えるだけだなんて最高じゃないか。俺を手伝ってくれても良いんだぞ」


必死な顔で言う友人の手元を見ると、半分埋まるか埋まらないかくらいだった。
それなのに今にも眠ってしまうんじゃないかと思うくらい目が開いていない。


「仕方ないな。手伝ってあげるから起きろ」

「愛してるぜビル」


急に元気になった友人が抱きついてこようとするのを避けて、教科書を手に取る。
使えそうな文章を探しながら、名前も同じように勉強したのかと想像してしまう。
そういえば名前の成績はどんな評価だったんだろうか。
薬草学と魔法薬学は成績が良さそうだ。


「ところでさ、クリスマス休暇中に会うのか?」

「ん?」

「手紙の彼女」

「ああ、会うよ。教えてもらいたいところもあるし」

「……お前休みにまで勉強してんの?」

「してる。今年は特に休暇中にもやらないと間に合わないだろ」


今まで名前に会う口実に勉強を教えてもらっていたのも確かだ。
しかし今年は試験が控えているので口実だなんて言わずとも勉強しなければ後々自分が苦しくなるだけ。
立てた計画通りにコツコツとやっていかなければ間に合わない。


「真面目だねぇ〜」

「お前もやれば?」

「気が向いたらな。それより勉強するって事は、何の進展も望めないわけか」

「……勉強がなくても進展させるつもりないよ」


その言葉を聞いて何やら不満の声を上げるけれど、返事をする事なく聞き流す。
未成年のうちは何度伝えたって進展なんて望めない。
好き嫌いの前にそのステージに立つ事すら出来ていないのだ。


「誰かに取られても知らねえからな」

「その時はその時。この話は終わり。それよりも早くやらないと寝る時間なくなるぞ」


時計を見た友人は途端に焦って文字を書き始める。
いつもいつももう少し早くやり始めればこんなに慌ててやる必要もないのに。
そう思いながら毎回課題に付き合っている自分も自分か。
名前も、同じような事があったのかもしれない。
1年早く生まれていたら、7年生の名前が見られたのに。
でも、そうなっていたら今みたいに仲良くなれていないかもしれない。
それに、あの人と仲良くしている名前を見る事になる。
それは嫌だと思うのだ。




(20211118)
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