好きと自覚をしても名前の家へ来てする事は変わらない。
デートに誘うと言っても夏休みの間は魔法は使えないし名前には仕事がある。
結局名前の仕事の手伝いをしながら毎日を過ごしているだけだ。
夏休みは長い筈なのに、あっという間に過ぎていってしまう。
ただふとした瞬間に手が触れたらそのまま手を握りたくなるのに、触るのを躊躇ったりする。
会えると嬉しくて家に帰る時間なんて来なければ良いと思うし、朝は早く行きたくて仕方がなくなる。
友人が会えば解ると言ったのが理解出来た気がした。


「そうだ、明日は私留守にするから」

「え?」

「外国に就職した友達が休暇を取ったみたいで、帰ってくるの」


鍋を撹拌しながら名前が何でもない事のように言う。
明日は会えないのか、と残念に思っていると名前が首を傾げてこっちを見ていた。
慌てて首を振って楽しんできてねとだけ伝える。
笑顔を見ながら次に会えるのは明後日だと考えていた。




ロンとジニーの子守をしながら過ごしていても一日は長い。
昼寝をする二人の側で窓の外を見ていると少し眠くなってくる。
食事の後だという事もあるし、特にやる事もないのも原因だと思う。
ママが誰かを叱る声も全く気にならない。
チャーリーとフレッドとジョージが何かしたんだろうか。
欠伸で出た涙を指で拭って立ち上がる。


水を入れたグラスを持って戻るとそれを飲みながら窓の外を見た。
遠くに小さく見えるお隣さんである名前の家。
今日は出掛けていて、会えない。
夏休みのたった一日会えないというだけ。
普段ホグワーツに居る期間の方が長いのに。
溜息を吐きながら立ち上がり振り向くと名前が居た。


「な、んで、名前が」

「偶然買い物中のモリーさんに会って暖炉使わせて貰ったの」

「えっと……友達は?」

「デートに行ったわ。する事もないし、ティータイムのお誘いもして貰ったから帰ってきたの」


ティータイムのお誘いはもしかしてママがしたんだろうか。
そう予想を立てていたらキッチンからママの声がした。
ロンとジニーが寝ているのを確認して名前とキッチンへ行く。
紅茶を飲みながら名前とママの話を聞いているだけで楽しかった。


「そういえば、貴女の事を聞きに来た方がいるのよ」

「え?」

「名前は言わなかったから解らないのよ」


ママが言い出した特徴はこの間会ったあの人に当てはまっている。
家に来ていたなんて知らなかった。
知っていても何か出来ていたかは思い浮かばない。
そもそもあの写真を見るまで顔も知らなかったのに。


「多分、同級生です。すみません」

「良いのよ。そう、同級生なの」


納得したのかママはすぐに別の事を話し始めた。
あの人はまた名前に会いに来るんだろうか。
来なければ良いと思うけれど、このまま諦めるとも思えない。
名前を守れたら、と思うのに未成年で夏休み中に魔法を使えない状態は不利だ。
ただ名前を守りたいだけなのになんて無力なんだろう。




次の日、名前の家へ行っていつものように手伝っていると梟が飛び込んできた。
羽根が大鍋に入らないように名前が慌てて梟を捕まえて部屋を出て行く。
代わりに大鍋を掻き混ぜていると嬉しそうに笑いながら名前が戻ってきた。


「どうしたの?」

「読む?」

「良いの?」

「ええ、どうぞ」


差し出された手紙を開き読み始める。
差出人の名前はパパとママの会話で聞いた事があった。
内容は息子が迷惑をかけてすまないといったようなもの。
ただそれだけの手紙なのに名前はとても嬉しそう。


「これ、あの人の?」

「そうよ。父親は世間体を気にするって言ってたのを思い出してね。もう来ない筈よ。ビルにも、迷惑をかけてごめんね」

「……うん」


何か力になれたらとは思っていたのに、思うだけになってしまった。
未成年じゃなかったら、名前と同い年だったら。
頭の中でそんな思いがぐるぐると回る。
手紙を返すと名前はそのまま暖炉に放り込んだ。
燃えて消えていく手紙を見ながら魔法薬を瓶に詰め続ける。




(20170502)
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