「ビル、ホグズミード一緒に行かない?」


名前を知らない女の子に声を掛けられて、友達と行くからと断る。
女の子はまた次ねと言って友達の所へ戻っていく。


「知り合い?」

「ううん。名前も知らないよ」

「ビル、あの子はお前に気があるんだよ」

「気?」

「今の、デートの誘いだろ?」


デートなんて言われても、名前も知らないのに。
それに行くなら名前と行きたいと思う。
どうしても名前と一緒には行けないけど。




クリスマス休暇、家に帰ると今年も名前が居てホッとした。
名前はクリスマスも一人だからといつもママが招待する。
相変わらず嬉しいけど面白くない気持ちがあって複雑な気分だ。
どうしてそんな風に思うのか解らなくてロンと遊ぶ名前を見る。


「ちょっと、痛いよジニー」

「ごめんね?」


首を傾げてそう言う妹がとても可愛い。
例え考え事をしている最中に髪を引っ張られたとしても。
高く抱き上げると嬉しそうに笑う。


「ジニー、何でだと思う?」

「なにが?」

「うーん……何だろう」

「うーん?」


ジニーと一緒に首を傾げる。
名前に聞いたらこの気持ちの正体が解るのかな。



ママが弟達を寝かしつけに行くと名前が部屋を片付け始めた。
それを手伝いながら聞いてみようか悩む。
パパが居るけど、ミカン片手に寝てしまっている。
でもこんな質問をして名前に変に思われたりしないだろうか。


「何か悩み事?」

「え?」

「眉間に皺が寄ってるから」


名前がロンのクマのぬいぐるみを片手に眉間を指差す。
悩み事とまで言えるのかは解らないけど、気になるのは確か。
でも上手く聞けないような気がして頭の中で色々な言葉が浮かぶ。


「あ、あのね、ホグズミードに誘われてて」

「お友達に?」

「ううん。名前も知らない子」


最初に誘われた時の次のホグズミード行きが発表された時にも誘われた。
友達と行くからと断るとやっぱり名前を言わずに去って行ってしまう。
調べれば何処の寮の何年生で何という名前は簡単に解る。
でもそこまでしようと思わないのはどうしてだろう。
名前の事なら今でもまだ聞きたい事がいくつもあるのに。


「まあ、デートのお誘い?」

「うーん……そうみたい?」

「良いわねぇ。青春だわ」


そう言いながら名前が杖を振るとおもちゃが片付いていく。
その音で眠っていたパパが目を覚ました。


「眠ってしまったようだ……ああ、片付けをしてくれたのか。有難う」

「いえ。そろそろ帰ろうと思います」

「うん、またおいで」

「はい。モリーさんによろしくお願いします」


パパと話してマントを巻く名前を追いかける。
外は雪が降っていて、暖炉で暖まった部屋とは大違いだ。
名前がフードを被って振り返る。


「明日、来るでしょう?」

「うん」

「待ってるわ。おやすみなさい、ビル」

「おやすみなさい、名前」


外に出た名前が手を振るから同じように振り返す。
泊まっていったら良いのにと思うけど、言う前に名前は帰ってしまう。
もっと一緒に居られたら良いのに。
バシンという音がして名前の姿が消えた。




(20160630)
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