名前の家で過ごす夏休みはいつもいつもあっという間に過ぎていく。
もうホグワーツからの手紙は届いてしまったし、新しい教科書も買いに行った。
杖を買って貰ったチャーリーは毎日嬉しそうに呪文集の呪文を試してはママに怒られている。
夏休みは魔法が使えないから少しだけチャーリーが羨ましい。


「早く成人したいなぁ」

「ふふ、魔法を使えないのは退屈よね」

「名前も夏休みは退屈だった?」

「そうね。家族に出来るようになった事を見せられないのはやっぱり、面白くなかったかな」


羽根ペンで何かを書きながら名前が言う。
そういえばいつも名前への手紙に学校の事を書く。
だから何を出来るようになったかは名前は知っている筈。
でも一度もそれを目の前でやった事は無い。
やっぱり魔法を使えるチャーリーが羨ましいなと思う。


「私もビルが成人するのは楽しみ」

「どうして?」

「だって、魔法を使うビルを見られるもの。いつも手紙で出来るようになったって書いてくれるけど、やっぱり見たいじゃない?」


名前の言葉にとても嬉しくなって、思わず笑ってしまう顔を隠す為に手元に集中する。
鍋の中はちゃんと名前の教えてくれた通りの反応をしていて、そんな事も嬉しい。


「そういえば、ホグズミードに行けるようになるのよね」

「うん。でもパパもママも行ってからのお楽しみってどんなところか教えてくれないんだ」

「じゃあ、私が話す訳にはいかないわね」

「えー」


教えてと頼んでも名前はクスクス笑うだけで教えてくれない。
すぐに魔法薬を包んでと頼まれてしまって聞くタイミングを逃してしまった。




名前がいつも使っている羽根ペンが浮かぶのをジッと見る。
嬉しそうな顔をするチャーリーの頭を名前が撫でた。


「凄いわチャーリー。さすがビルの弟ね」

「でも家でやるとママは怒るんだよ。ビルもやってたのに」

「僕はお前と違ってママに怒られてからはやってない」

「名前の家でやってた」


言い返そうとしたら口の中にクッキーが入れられる。
驚いてチャーリーを見るとチャーリーも同じようにクッキーを入れられていた。


「食べてね。せっかく紅茶淹れたんだから」


僕とチャーリーの前に紅茶が置かれる。
頷いたチャーリーが砂糖を入れるのを見て、そのまま飲む。
家では砂糖を入れるけど今日はそのまま飲みたい気分だった。
思っていたよりも苦くなくて美味しい。


「チャーリーは、どの寮になるかしら」

「僕グリフィンドールが良いなぁ」

「ふふ、ビルと同じ事言ってるわ」


名前が僕がホグワーツに入る前の話を始める。
それを聞きながら名前の顔を見ていると不思議と笑いたくなってきた。
何故か解らなくて砂糖の入っていない紅茶を飲む。




(20160622)
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