夏休みはあっという間に過ぎて、気が付けばもうクリスマス。
勿論家に帰る為荷造りをしてホグワーツ特急に乗り込んだ。
駅に迎えに来ていたパパと一緒に家に帰る。
今日は名前じゃないんだ、ってちょっとガッカリした事はパパには内緒だ。


久しぶりに帰って来た家は相変わらずで、ホッとする。
ホグワーツで寂しいとは思わないけど、やっぱり少し寂しいのかもしれない。


昼食を食べ終えて名前の家に行こうと立ち上がるとママに呼び止められた。
名前に会いに行きたいのに、って思うけど、怒られるから返事をする。


「ロンとジニーのお世話をお願い」

「はーい、ママ」


皿を片付けて名前の家に行けないとがっかりしながらジニーとロンを連れてソファーに座った。
ジニーは最後に会った時より歩くのが上手になった気がする。
ジニーを膝の上に乗せるとやっぱり前よりも重かった。
女の子は成長が早いなんてママが言ってたけど本当みたい。


「ロン、何しようか」


隣に座っていたロンに声を掛けるとソファーを降りて走って行く。
その時、キッチンからママの怒る声が聞こえてきた。
フレッドとジョージがまた何かしたのかもしれない。
チャーリーが慌ててパーシーと手を繋いで庭に出て行く。
ママが怒っている時は近くに居ない方が良い。


「ビル、これ」

「チェスやりたいの?」


戻ってきたロンが持ってきたのはパパのチェスセット。
何度も頷くからジニーを一度ソファーに座らせて駒を用意する。
時々手が伸びてきて駒が一つ一つ消えていく。
何度もジニーから取り返しながら並び終えるまでいつもより時間が掛かってしまった。
駒がどう動けるかロンに教えながら駒を動かしていく。
やっぱり時々ジニーが駒を持って行ってしまうから時間はかかるけど。


ロンが悩んでいるのを見ながら名前は元気かななんて考える。
手紙には元気だって書いてあったけど、やっぱり会って確かめたいと思う。
勉強も教えて貰いたいし魔法薬を作るのだって手伝いたい。
明日は絶対に会いに行こうと決めて髪を引っ張るジニーの手を優しく外した。




チェスをしている間に寝てしまったジニーとロンに毛布を掛けて散らばった駒を片付ける。
チャーリーとパーシーはどうしたかな、と外を見るとフレッドとジョージも一緒に雪だるまを作っていた。
ボーっとそれを見ていたらこんばんはという声がして慌てて振り返る。
ママに何かを渡しているのは会いたいと思っていた名前だった。
ママにお礼を言っているからママが招待したらしい。
今日は会えないと思っていたのに、会えた。
慌ててキッチンに近付くと気が付いた名前がにっこり笑う。


「ビル、元気そうね」

「うん、名前も」

「今お茶淹れるわね。ビル、手伝って」

「はーい」


カップを三つ出してくるとママがそれに紅茶を注ぐ。
それを名前の前に置いてそのまま隣に座る。
ママがクッキーを真ん中に置いてそのまま向かい側に座った。


「今年も遊びに来ちゃって、ちょっと申し訳ないです。せっかくのクリスマスなのに」

「あら、良いのよ。お隣じゃない」

「そうだよ。僕は名前が来てくれて嬉しいよ」

「有難う」


そう言って名前は笑ったけど、何だかいつもと違うような気がする。
名前がいつもみたいに笑っていないと何だか嫌だ。
でも理由が解らなくてどうすればいつもみたいに笑ってくれるかが解らない。


「ビル、ロンとジニーは?」

「寝てるよ」


ママがロンとジニーを見に行くのを見送ってクッキーをかじる。
名前も同じようにクッキーをかじっていて、目が合うと笑顔になった。


「やっぱりモリーさんのクッキーは美味しいわね」

「うん。でも名前のクッキーも美味しいよ」

「ビルだけよ、美味しいなんて言ってくれるの。祖母にはあんたは料理が下手ねなんて言われちゃった」


肩を竦めてそう言うと名前はまたクッキーを手に取る。
名前の料理、僕は美味しいと思うんだけど。
名前のお祖母ちゃんは料理が上手な人なのかもしれない。


「そういえば、クリスマスは家に帰らないの?」

「うん、帰らない。モリーさんに誘って貰わなきゃ今頃一人だったわ」


クリスマスに一人、なんて考えなかった。
ママが名前を誘ってくれて本当に良かったと思う。




(20160221)
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