習慣とはいえ休日くらいゆっくり寝たいと思う。
でも起きてしまったし、とすっかり明るい窓の外を眺める。
小さく息を吐いて寝返りを打てば気持ちよさそうに眠るビルの姿。
久しぶりに見る寝顔に不思議と胸が温かくなる。
このまま眺めているのも良いかもしれない。
私のお腹が空腹を訴えなければ、の話なのだけど。
起こさないようにそっとベッドを抜け出した。


食パンをトーストし、卵とベーコンを挟む。
野菜をたくさん入れたスープをカップに盛り付ける。
ビルはオレンジジュースを飲むだろうか。
少し悩んで結局二つのグラスにオレンジジュースを注ぐ。
ヨーグルトがあった筈だと冷蔵庫を開けた瞬間、両側に腕が伸びてきた。
そのまま抱き締められ、ビルの頭が肩に乗せられる。


「おはよう。早いね」

「いつもの時間に起きちゃったの」

「そうみたいだね」


目当てのヨーグルトを取り出すとビルが離れた。
振り返るとパジャマ姿のまま朝食を覗き込んでいる。
これはあんまり見た事の無い姿だ。
ホグワーツに居た時にビルのパジャマ姿は見た事が無い。
隠れ穴で数回とこの間泊まりに来た時に見たくらいだ。
付き合ってもう長いけれど、まだまだ知らない姿がある。


「今日、何か予定はある?」

「んー……特には」

「そう。じゃあ、名前の家に行かない?」

「家?良いけど、どうして?」

「うん、ちょっとね」


そう言って笑ったビルはスープに手を伸ばした。
特に予定も無いし、久しぶりに家に帰るのも良いかもしれない。
両親が居るかどうかは解らないけれど。




クリスマス以来の家は特に変わった所は無いようだ。
久しぶりのビルの訪問を両親は喜んでくれたらしい。
私をそっちのけでビルと話している。
仕事は何をしているのとかエジプトの話とか。
呪い破りについて二人がどの程度理解出来たかは不明だ。


「いけない、お昼の準備しなきゃ。ビル、お昼食べていってね」

「あ、はい」

「名前、手伝って」


ママの言葉に頷いてキッチンへと向かう。
背後でパパがゴルフの話を始めたのが聞こえた。
パパのゴルフの話はとてもとても長い。


コテージパイにマカロニアンドチーズ、そしてオニオンスープ。
出来上がった昼食を並べ終えてビルとパパを呼びにリビングへと入る。
すると、料理を始める前に始まったゴルフの話は終わっていて、何故か沈黙が流れていた。
ビルは真剣な顔をしていてパパは腕を組んで目を閉じている。
私がキッチンに居る間に二人の間で何があったのだろう。
どう声を掛けようか悩んでいると突然パパが大きく息を吐いた。
そして閉じていた瞼を開くと徐にビルを名を呼ぶ。


「宜しく頼むよ」

「はい」

「さあ、食事が出来たみたいだ。そうだね、名前」

「あ、うん。ママが待ってる」


パパはビルに行こうと声を掛けて呆然とする私の肩に手を置いてキッチンへと入った。
訳が解らず首を傾げていると目の前に立ったビルが私の頭を撫で始める。


「ビル、何の話してたの?何か、パパが変な事お願いしてない?」

「大丈夫だよ」

「本当?それなら、良いんだけど」


頭を撫でていた手が滑り降り、今度は両手で背中を押す。
そしてもう一度大丈夫と言ったビルとキッチンに入る。
昼食の間、ビルとパパをこっそり見ていたけれど特に変わった様子は見られなかった。




(20141123)
8
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -