パーティーの片付けを手伝おうとしたらモリーさんにお客様だから、と断られてしまった。
それどころか紅茶を淹れてくれて暖炉の前に案内されてしまって申し訳なくなる。
確かにモリーさんの邪魔になってしまう可能性があるから迂闊に手を出す事は出来ない。
仕方無くチビチビと紅茶を飲んでいたらビルが階段を降りてきた。
私を見て笑顔を浮かべてからキッチンへと目を向ける。


「あら、ジニーは寝たの?」

「寝たよ。フレッドとジョージはまだ起きてるみたいだけど」


ビルがそう告げた瞬間、上から爆発音が聞こえてきた。
全くあの子達は!と怒りながら階段を登るモリーさんを見送る。
何度も見たけれどやっぱりモリーさんは怒らせない方が良い。
怒らせるような事をするつもりも無いけれど。


「ごめんね」


紅茶をカップに注ぎながらビルがそう呟いた。
何か謝られるような事があっただろうか。
今日の事を思い返しているとビルが隣に腰を下ろした。


「相変わらず騒がしい家で」

「そんな事無いわ。楽しくて好きよ」

「有難う」


嬉しそうに笑ってビルがカップを傾ける。
私も同じようにカップを傾けるとモリーさんの声が聞こえた。
あの二人の事だから火に油でも注いだんじゃないだろうか。
それでも普通に眠っていられるウィーズリー家の人達は凄い。
でもパーシーは神経質だから起きてしまいそうだ。


「ねえ、名前」

「ん?」

「クリスマスプレゼントなんだけど」

「あ、見たわ。可愛いオルゴールを有難う」


今朝開けた箱の中から出てきたピンク色のオルゴール。
聞いた事の無いその曲は魔法界では有名らしい。
暫く聴き入ってしまう程に綺麗なメロディーだった。
今は昔使っていた自分の部屋の机の上に置いてある。
自分の部屋に戻ったら置く場所を考えなくては。


「実は、もう一つあるんだ」


その言葉にビルを見ると何故か慌てたように目を逸らされる。
と言うよりは何だか緊張しているように見えた。
ビルが緊張しているところなんて滅多に見られない。
持っていたカップを取り上げられ、テーブルに置く音がした。


「これなんだけど」

「開けて良い?」


ビルが頷いたのを確認して四角い箱のリボンを解く。
箱を開けると中に入っていたのは恐らくリングケース。
ゆっくり開くと中にはやっぱり指輪が入っていた。
宝石の付いていないシンプルなゴールドの指輪。


「それ、付けてて欲しいんだ」


先程まで違う所ばかりを見ていた青色の瞳は真っ直ぐ私を見つめる。
そんな青色の瞳と指輪を何回か交互に見て指輪を持ち上げた。
何処に付けようか悩んで、やっぱり此処だろうか、と薬指を通す。
その様子をジッと見つめていたビルがホッとしたように笑った。


「綺麗な指輪を有難う。でも、二つも貰っちゃって良いの?」

「うん、僕もちゃんと二つ貰ったから」

「私何かあげたかしら?」


一つは今朝届くように送った本の事だろう。
もう一つは思い当たる物が無い。
でも、ビルは満足そうに笑ってカップに手を伸ばした。
そして、そういえば、と話題を変える。
きっと答えは聞いても教えてくれないだろう。


「ビル」


エジプトの話をしていたビルの名前を呼ぶと話すのを辞めて私を見た。
身を乗り出してビルの唇に自分の唇で触れる。
理由は特に無いけれど何となく、したくなったのだ。




(20140719)
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