クリスマスの朝、食後にと紅茶を淹れてのんびりとしていたらふくろうが一羽飛び込んで来た。
クッションに飛び込んだまま動かなくなってしまって慌てて助け出す。
弱々しく鳴いて手紙が括り付けてある足を差し出したふくろうには見覚えがあった。
ウィーズリー家のふくろうであるエロールで、差出人は限られてくる。
手紙を広げると見慣れたビルの文字では無く、偶に見るモリーさんの文字が並んでいた。
読み進めていくうちにのんびりとしている場合じゃない状況を理解して慌てて立ち上がる。
モリーさん直々にクリスマスのお誘いがあり、一時間後にビルが迎えに来るという。
慌てて返事を書いてエロールにお水を飲んで貰ってから配達をお願いする。
エロールに余り無理はさせたくないけれど、今は頑張って貰わなければならない。
無事に飛び立ったのを見届けるとクローゼットを漁って身支度を始めた。
一時間後、やけにニヤニヤした両親に見送られて家を出る。
暖炉の炎で暖かい部屋と違い、寒さが肌を刺す。
マフラーで顔の半分を覆うと少しだけ暖かさが増した。
殆ど誰も歩いていない街は静かで世界に私だけのような気がしてくる。
偶に歩いている人を見かけても目的地を目指してあっという間に姿は消えていく。
ダッフルコートのポケットに手を突っ込んで息を大きく吐いた。
白い息が消えて無くなった瞬間聞こえた一つの音。
「ごめん、待たせた?」
「うん、ちょっと」
「家の中で待ってて良かったんだよ」
「良いの。ちょっとだけ楽しかったから」
「そう?」
ビルの差し出した手に自分の手を重ねる。
ぐにゃりと世界が歪むのを見た。
隠れ穴はいつ来ても賑やかでまるでホグワーツみたいだと思う。
勿論ホグワーツの方が更に賑やかなのだけど。
モリーさんのお手伝いをするビルの弟達にマグルの物だろう本を読んでいるアーサーさん。
私もお手伝いをしようと思ったらお客様だからと断られてしまい、やる事が無い。
せめてもと思い兄弟の中の唯一の女の子であるジニーと遊ぼうと思ったのに逃げられてしまった。
初めて来たからずっとジニーには避けられてしまっている。
女の子だから仲良くなれればと思うのだけど、なかなか難しい。
ビルと遊ぶジニーはあんなにも楽しそうなのに。
「やあ名前」
「あら、居たのねチャーリー」
「居たよ。来た時に見ただろ?」
「高い所を飛んでたから」
「そうだけど」
肩を竦めたチャーリーの頬は赤くなっている。
タオルを渡すと向かい側に座って顔や髪を拭く。
相変わらず箒で飛ぶ事が好きらしい。
「ああ、ジニーにビルを取られたのか」
「逆。ビルにジニーを取られたの」
「もしかしてまた逃げられた?」
「その通り」
「ジニーはビルが大好きだからな」
うんうん、と頷きながら言うチャーリーに紅茶を渡す。
ジニーと仲良くなるにはまだまだ時間が必要だろう。
諦め気味に溜息を吐くとチャーリーが気にするなと笑った。
(20140701)
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