気が付けば時間があっという間に過ぎてしまった。
仕事を覚えるのと、慣れるのに大変だったのと。
やっと少しだけ余裕が出てきた11月中旬、ビルから手紙が届いた。
お昼に読もうと持ってきたは良いけれど読めるかどうか怪しい。
仕事場の机にリビーからランチのお誘いが届いていたのだ。


目当てのお店に入ると直ぐに名前を呼ばれてそちらへ足を向ける。
向かい側に座って注文を済ませるとにこにこ笑ったリビーがそれで?と首を傾げた。
直ぐに運ばれてきたサンドイッチに手を伸ばしながらリビーに先を促す。


「どうなの?魔法不適正使用取締局」

「今のところミスしないように精一杯。リビーは?」

「私は雑貨に囲まれてるだけだもの。偶にお客さんと話すだけだから楽よ」


ダイアゴン横丁にあるファッション雑貨のお店でアルバイトをするリビー。
遊びに行けたら良いなぁとは思うけれど、まだ一度も行けていない。
今度の休日にでも行ってビルの誕生日プレゼントを選ぼうか。
そんな事を考えながらサンドイッチをかじるとレタスがシャキッと音を立てた。
レタスにトマトに玉葱にオリーブと沢山野菜が入っている中に卵焼きが挟んである。
先輩が此処は美味しいと言っていたのを思い出して確かにこれは美味しいと思った。


「ビルの誕生日プレゼントは?」

「ん、今ちょうど考えてた。今度の休みにお店行っても良い?」

「良いわよ。選ぶの手伝ってあげる」


任せなさいと胸を張るリビーにお礼を言ってまたサンドイッチをかじる。
今度来た時はハムのサンドイッチにしてみよう。
また一つ、来たいと思えるお店が出来た。
ビルが帰って来た時に一緒に来るのも良いかもしれない。




ビルからの手紙を読む事が出来たのはあの日の夜、返事を出したのは翌日。
今日プレゼントを送ると向こうに到着するのはそんなに変わらないかもしれない。
目の前でレザーのブレスレットを何種類も広げているリビーにそう伝えてみる。


「そんなの気にしないの。大体貴女達は連絡取らなさすぎなのよ」

「そうかなぁ」

「そうなのよ。これなんかどう?ビルの髪みたいじゃない?」


リビーが指したブレスレットは確かにビルの髪の色に似ていた。
でも似ているだけで、やっぱりあの赤毛とは違う。
似合いそうだとは思うけれど、何となく気が乗らない。


「んー……茶色にするわ」

「解った。今包むから待ってて」

「うん。ありがとリビー」

「これ位どうって事無いわよ。クリスマスプレゼントも困ったら来れば良いわ」

「そうする」


お金を払って、綺麗に包まれたブレスレットを持ってお店を出る。
その足で郵便局に向かい、ふくろうに包みを託した。
無事エジプトまで届いて、更に気に入ってくれますように。




(20140514)
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