ふわふわの白い毛に長い耳、そして赤い目は何処からどう見ても兎に違いない。
この間ジョージに言われた通りにしてみただけで、一回で成功した。
「見てロッティ!名前が成功したわ!」
「本当だわ。凄いじゃない」
ギュッと抱き付いてきたキャスに頭を撫でるロッティ。
褒められて、改めて成功したのだと自覚する。
それに気付いたマグゴナガル先生も私の兎を見て頑張りましたねと褒めてくれた。
ジョージに言われた通り杖の振り方を直しただけ。
という事は私の杖の振り方が良くなかったのだろうか。
そしてジョージはそれを知っていた。
そこに行き着いて何だか急に落ち着かなくなる。
チラリとジョージを見るとクッションは何故か犬になっていた。
フレッドのクッションも同様で二匹の犬は楽しそうに遊んでいる。
ジョージに会ったら絶対にお礼を言おうと決めたのに、そういう時に限って会えない。
授業中は同じ教室に居るのに授業が終わるともう姿が消えている。
それを繰り返して夕食の時ならばと思ったのにタイミングが悪かった。
彼等の兄であるパーシーは居たけれど、まさかパーシーに二人の話は聞けない。
何度かパーシーが二人に怒鳴り散らしているのを見ている。
二人の悪戯の的になっているのはきっとグリフィンドール生ならば知っているだろう。
「名前、ずっとキョロキョロしてどうしたの?」
「あ、うん…フレッドとジョージを探してて」
「あら、フレッドとジョージじゃなくてジョージじゃないの?」
ニヤニヤ笑うキャスはやけにジョージの名前を強調する。
間違いではないから否定する訳にもいかず、苦笑いを浮かべるしかない。
オレンジジュースを飲み干してゴブレットを空にして立ち上がった。
二人に先に戻ると伝え、大広間を出る。
もしかしたら談話室に行けば会えるかもしれない。
そう思うと自然と歩く速度は上がっていった。
「あら名前、もう夕食は終わったの?」
「うん。あ、アリシア、フレッドとジョージ見てない?」
「見てないわ。アンジェリーナ、フレッドとジョージ知らない?」
アリシアがちょうど寮から降りてきたアンジェリーナに声を掛ける。
けれどアンジェリーナも見ていないと横に首を振った。
どうやら私は今日とことん運が悪いらしい。
寮が違う訳でも学年が違う訳でも無いのに。
「見掛けたら名前が探してたって言っておきましょうか?」
「え!あ、大丈夫!そんなに急ぎじゃないし!」
「そう?会えると良いわね」
擦れ違いざまにポンと肩に手を置いてアリシアは談話室を出て行った。
溜息を吐いて、誰も居なくなった談話室の隅に座り込む。
習慣とは恐ろしいもので意識していた訳じゃないのにいつもの席だった。
課題を思い出して古代ルーン文字学の教科書と辞書を取り出す。
談話室に居ればそのうち会えるだろう。
いつの間にかキャスとロッティが帰って来ていたと思ったらキャスは慌ててまた談話室から出て行った。
呆然とその姿を見送っているとロッティが恋人とだけ呟いて羽根ペンの動きを再開させる。
キャスは羨ましいな、といつもほんの少しだけ思ってしまう。
三年生の終わり位からの付き合いなのにあの二人は変わらずに仲が良い。
「やあ、名前、ロッティ」
さあ続きをやろう、と意気込んだ瞬間に飛び込んできた声は私の手を止めるには充分だった。
顔を上げるまでもない、あんなに会えないと思っていたジョージが目の前に立っているのが解る。
それ、とロッティが呟いた声を不思議に思いながら顔を上げたと同時に薔薇が一輪目の前に現れた。
チラリと薔薇を差し出すジョージを見ると薔薇を見ろと指で指し示す。
その薔薇を見詰めているとパンッと音がして爆発し、紙吹雪が舞い、それは最終的に光になって消えていった。
「な、に?」
「言った通り変身術上手くいっただろ?だからそのお祝いに」
「あ、有難う!」
「急いで作ったから大した事無いけど」
元に戻った薔薇を受け取ってそんな事は無いと首を横に振る。
じゃあな、と去っていくジョージにロッティが見直したと呟いたのが聞こえた。
(20131117)
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