ジョージかフレッドか、どちらか解らないけれどブラッジャーを思い切り打ち返した。
慌てて双眼鏡を覗いて確認するとどうやらフレッドだったらしい。
じゃあ、ともう一人のビーターを探し、見つけると丁度ブラッジャーを叩きつけたところだった。
やっぱり、クィディッチをしている姿はかっこいいと思う。


「名前、見た?シュートが決まったわ!」

「え?見てなかった!」

「80対0よ!」


ロッティが得点を教えてくれたけれど、その時レイブンクローがゴールを決めた。
ファイアボルトを手に入れたポッターが動くと皆一斉にそちらを見る。
だけど私はずっとジョージを追い掛けて実況に耳を傾けていた。
アンジェリーナに向かっていたブラッジャーをジョージがレイブンクローのビーター目掛けて叩きつける。
そしてフレッドとハイタッチをしてはまたブラッジャーを追い掛けていく。


ホイッスルが試合終了を告げると皆大騒ぎをしながらフィールドに飛び込み始めた。
行くわよ!とキャスに腕を引かれて集団についていく。
観客席からは見えていた輪の中央もあっという間に見えなくなった。
でもグリフィンドールの勝利は嬉しかったし、ジョージの喜ぶ声も聞こえる。


談話室ではクィディッチで優勝が決まったかのようなパーティーだった。
フレッドとジョージがバタービールの瓶で曲芸を始めたのを遠くから眺める。
近くで見なさいよとロッティに言われたけど、此処でも充分だ。
だって二人は今パーティーの中心に居るのだから。
曲芸を終えると二人は丁寧にお辞儀をして一気に見えなくなった。


「私クランペットを取りに行ってくるわ」


そう言ってロッティは人混みの中へと姿を消す。
チビチビとバタービールを飲みながらキャスの話を聞く。
これからスリザリン相手にどうしたら勝てるか。
今日のキャスのテーマはそれらしく、色々な戦法を語っている。
私はそこまでクィディッチに詳しくは無いからただ頷いて聞くだけだ。
戻ってきたロッティはそんなキャスを見て肩を竦める。
いつもの事ながら、キャスの話はまだまだ続きそう。


「やだ、バタービールが無いじゃない!」

「私取ってくるよ」

「そう?お願いね!」


立ち上がってバタービールの置いてある場所を目指す。
普段は簡単に行ける談話室でも今は人が一杯で進むだけでも大変。
何とか人を掻き分けて進むけれど、あちこちから押される。
突然背中に誰かがぶつかってバランスを崩した。
転ぶかもしれない、と目を閉じて衝撃を覚悟する。
けれどなかなか襲ってこない事を不思議に思って目を開けた。


「大丈夫か?」

「あ…うん、大丈夫。有難う」

「名字は小さいからな。何か取りに行くのか?」


支えてくれていたのはフレッドで、また転ばないようにか手を繋がれる。
バタービールを取りに行くのだと伝えればその手を引かれた。
フレッドは体がガッシリしているから、人を掻き分けるのも簡単そうに見える。
後ろをついて行くだけであっという間に人混みを抜けて談話室の反対側まで辿り着いた。


「何本?」

「ええと、三本」

「はい、三本な。お、終わったのか?」


瓶を受け取って、フレッドの言葉に首を傾げていると人混みからジョージが現れる。
手には空の袋を持っていて、どうやらお菓子をばら撒いてきたらしい。
私を見てジョージはまたにっこりと笑った。


「キャス達と一緒じゃないのか?」

「あ、あの、キャスは…クィディッチの話に夢中で」

「ああ、キャスはクィディッチ好きだからなぁ」


キャスとは比較的仲が良いから解っているらしい。
ジョージ相手だと途端に上手く話せなくなる。
フレッド相手なら、普通に話せるのに。
バタービールの瓶を持つ手に自然と力がこもった。


「あ、私そろそろ戻らなきゃ」

「ああ、気を付けろよ?そうだ、これやるよ。一つ残ってたんだ」


抱えているバタービールの上に乗せられた蛙ミント。
お礼を言わなくちゃ、と顔を上げたけれど、ジョージは誰かに腕を引かれて行ってしまった。
どうしよう、また話せてしかも気を付けてと言って貰えて蛙ミントを貰うなんて。
幸せが一気に押し寄せて来てどうしたって顔が緩んでしまう。




(20131101)
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