カチャカチャとピーターの抱えている袋の中から音がし出した。
何が音を立てているのか解らず、かと言って手を突っ込むのも躊躇われる。
何故ならピーターが抱えているのはジェームズとシリウスが買い込んだ悪戯道具がぎっしり詰まった袋だからだ。
ビクビクとしながら思い切り首を後ろへ伸ばして袋と距離を取っているピーター。
助けたいとは思うけれど、なかなか手を出す勇気が出ないのが現実だった。


OWLが終わって直ぐにホグズミード休暇があって、正に今行ってきたところ。
ハニーデュークスの新商品を買った僕と荷物持ちのピーター。
先に戻るから、と城まで戻ってきたは良いけれど、問題はこの音。


「どどどうしようリーマス!」

「うーん…どうしようね。直ぐに爆発したりとかはないだろうけど」

「ばくはつ…」


さあっと顔が青くなったピーターは出来る限り腕を伸ばして袋と距離を取る。
あの二人が何を買ったかが解れば解決する話なのだけど。
とりあえず部屋まで運んでしまうのが良いだろうと意見が一致した。


ひたすらグリフィンドール塔を目指して進む。
廊下を曲がったところで人影が目に入る。
一人は白い髪に長い白い髭、もう一人は長い黒い髪。
ダンブルドアがこんな所に居るのも不思議だけど、名前と居るのも不思議な光景だ。
何かを話しているのは解るけれど声は全く聞こえてこない。
そんなに離れている訳でも周りが賑やかな訳でもないのに。


「あら、リーマス!ピーター!」


不意に此方に気付いた名前が笑顔で手を振った。
それにつられたようにダンブルドアもゆっくりと振り返る。
こんにちはと挨拶を交わす間、ダンブルドアの目はピーターの抱えている袋を見ていた。
それに気付いたピーターは慌てて袋を背中に隠す。
それでも相変わらず何かがカチャカチャと音を立てている。


「もう帰って来たの?」

「うん。荷物が沢山になっちゃったから部屋に置きに行こうと思って」

「本当ね。じゃあ、私も帰ります」

「呼び止めて悪かったのう」

「そんな事を言って頂けるなんて吃驚だわ」


クスクス、と笑いながら名前はダンブルドアを見つめ返す。
ダンブルドアに対してやけに砕けた話し方をする。
もしかしたら知らないところで過去に交流があったのかもしれない。


「友達が出来たようで何よりじゃ」

「あら、仲良くしなさいって言ったのは校長先生だわ」

「確かに言うたのう」

「それに、私はちゃんと、学生をやってます。文句は無いでしょう?」


話が見えず、ピーターと顔を見合わせて首を傾げる。
名前は話が終わったのだと言うように歩き出す。
ダンブルドアに挨拶をして追い掛ける。
何故か、曲がり角を曲がるまでダンブルドアが此方を見ていたような気がした。


「ところで、またホグズミードに行くの?それなら私が荷物運んでおくわよ」

「いや、僕はもう行かないよ」

「そう。ピーターは?」

「え?ぼ、僕は…来てって言われた、から」

「じゃあ、その荷物預かるわ」


名前の言葉に一瞬悩んで、お願いという言葉と共に袋を渡すとピーターは来た道を戻っていく。
相変わらずカチャカチャと音を立てている袋を名前がジッと見つめ、徐に手を突っ込む。
そして取り出されたのは音を立てている正体の時計だった。
何も変わったところは無いように見えるけれど、これも悪戯道具なんだろうか。


「針の動く音が大きくなってるわね」

「何で急に」

「機嫌が良くないのよ、きっと」


ふふ、と笑った名前が時計を一度撫でるとカチャカチャという音が止まった。
それを袋に戻してからゆっくりと歩き出す。
名前はヒールの高い靴を履いているのか、カツンカツンと音がする。
そういえば、前に編み上げブーツを履いていた事があった。
しかし直ぐに夢だったかもしれないと思い直す。
名前が丈の短い貴族服を着ていたなんて、きっと夢に違いない。


「あ、そういえば、ダンブルドアとの話、邪魔しちゃった?」

「いいえ。大した話じゃないから大丈夫よ」

「そうなんだ」

「それより、オリオンさんがまたチョコレート送ってくれたのよ。一緒にどうかしら?」


にっこり笑ってそう提案する名前に勿論肯定の意を示して、少しだけ道を急ぐ。
ホグズミードで買った新商品も、幾つか名前と分け合って食べよう。




ベルギーのチョコレートだというそれは見た目も綺麗だった。
名前はこれを何の躊躇も無く一箱丸ごとプレゼントしてくれる。
申し訳無いと思いながらも買ってきた新商品の木苺のキャラメルを渡す。
どう考えたって値段が釣り合わないのに、名前は嬉しそうに笑う。


「んー!美味しいわ!木苺のキャラメルは当たりね」

「確かに。もう少し甘くても良いけど」

「ふふ、リーマスならそう言うと思ったわ。シリウスなんて嫌がりそうだけど」


楽しそうにそう言って名前は杖を振ってティーセットを出す。
シリウスと言えば、OWLの少し前から二人の関係が変わったような気がする。
名前は相変わらずで、変わったのはシリウスの方。
名前への態度が最近少し柔らかくなったような気がする。
何かあったのかと暫く観察していたけれど、恋人にあるようなそれではない。
でも、確実にシリウスの中で名前に対する感情が変わっている。
もしいつか二人が恋人になるのなら、それは嬉しい事だ。
ジェームズの恋よりは、上手くいきそうな気がする。


「この先も、こうしてリーマスと甘い物が食べられたら良いわねぇ」

「シリウスじゃなくて?」

「だって、シリウス甘い物苦手じゃない」


こーんなに美味しいのに、と言いながら名前がチョコレートを一粒口へ運ぶ。
名前がそう思っていてくれるのが嬉しくて、同じ事を思った。
卒業しても、友達としてこうして甘い物を広げていられたら、それはどんなに嬉しいだろう。
そして、その周りに親友達の姿もあればと、そんな事を望む自分が居る。




(20140317)
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