真っ黒のローブを着た私を渋々見送るジョージの顔。
お店に行かなければならないのだからと無理矢理手を離した。
本当は一人で行きたいから、仕事と聞いて少し安心したのは私だけの秘密。
フードを被って姿眩ましをする直前までジョージは拗ねていた。


キングズリーに許可を貰って、ビルに報告をした今日の事。
ビルが話したらしく、リーマスやシリウスにまで心配された。
けれど、大丈夫だと三人に言い聞かせたのはつい二日前。
テッドが可愛くて仕方ないといった表情から少し怒った表情になったリーマスは少しだけ恐かった。


辿り着いた場所には沢山の墓石が並んでいる。
その全てが一年前の今日命を落とした死喰い人の物。
ベラトリックス・レストレンジの物もある。
一番奥まで歩いて行くと、目当ての場所に辿り着く。
トム・マールヴォロ・リドル、ヴォルデモートのお墓だ。
持ってきた花束を名前の下に置き、その場にしゃがみ込む。


この場所を作って欲しいとキングズリーに頼んだのは私だ。
勿論世間からは反対の声もあったけれど、賛成の声がなかった訳ではない。
キングズリーも同じように考えてくれた事もあってこの場所が作られた。
お墓参りに来る人なんて滅多に居らず、ただただ静かなだけ。
魔法省の許可を得られれば誰でも来られるけれど、皆そんな気はないらしい。
あくまでも此処は厳重に魔法省の監視下に置かれているだけの場所。


「これはこれは、珍しい場所でお会いする」


声に振り向くとシルバー・ブロンドに灰色の瞳を持つマルフォイさんが立っていた。
見下したような顔は相変わらずで、灰色の瞳はギラギラと私を見ている。


「こんにちは、マルフォイさん。お墓参りですか?」

「一応、親戚も居るのでね」


チラリ、とベラトリックスのお墓を見て口の端を上げた。
マルフォイさんは確か、ヴォルデモートには恐怖心から従っていた筈。
だとしたらベラトリックスのお墓参りというのは事実だろうか。


「熱心なのですね」

「君は、何故此処に?我が君は君にとって敵だろう?」

「死んでしまえば敵も味方もありません」


私の言葉にマルフォイさんは何も言わなかったけれど、明らかに目は見下していた。
この人はそう簡単に変わらないと思っていたけれど、どうやら当たりらしい。
驚く事にナルシッサさんからはお礼の手紙が来たというのに。
心の中で溜息を吐き、その場を去ろうとしたら擦れ違った瞬間に手を掴まれた。
それは全く優しくなく、青白い指は私の手首をギリギリと締め付ける。
痛みを表に出さないように堪えながら首だけで振り向いた。


「ドラコに何を吹き込んだ?」

「何も吹き込んでいませんよ」

「ならば何故お前なんかに執着する!」


先程までの貴族らしい振る舞いはどうやら辞めたらしい。
ギラギラと怒りを込めて私を睨み付ける瞳は魔法省のあの部屋を思い出させる。


「今のように成長したのは全てドラコ自身が考えて決めてきた事です」


マルフォイさんが口を開く前に掴まれた腕を引っ張った。
案外するりと簡単に抜けた腕は掴まれていた部分が赤くなっている。
これは帰る前にどうにかしなければジョージが心配してしまう。
失礼します、と声を掛けて再び歩き出す。
今度は腕を掴まれる事も声を掛けられる事もなかった。




(20130622)
5月2日
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -