「僕とダンスパーティーに行きませんか?」
「あの、ごめんなさい」
断る言葉を聞いてホッと胸を撫で下ろした。
急いで歩いていく名前を追い掛ける。
早く申し込まなければ、誰かに取られてしまう。
一緒に行きたいのは勿論だけれど、何より着飾った名前が見たい。
声を掛けようとしたら先にマルフォイが声を掛けた。
チラリと俺を見てニヤリと口の端を上げる。
「おいジョージ、そろそろ行かなきゃ間に合わないぞ」
後ろ髪を引かれ捲りだけど、授業に遅れてしまう。
また後でシャロンか本人に聞けば良いし、仕方なくその場を離れる。
ダンスパーティー当日、俺の隣に居るのは名前じゃなくシャロン。
名前が行かないからと落ち込んでいる俺を見かねて誘ってくれた。
シャロンの事は好きで大事な友人だけれど、やっぱり名前と来たかったのが本音。
シャロンは何か理由を知っているようだけれど教えてくれない。
「嘘でも楽しくしなさいよ」
「シャロンとが嫌な訳じゃないけどさ…名前のドレスローブ見たかったんだよ」
「私だって見たかったわ!昔見たけど!」
「いつ?」
「名前が家に来てる時にね」
「狡い!」
羨ましいでしょ?とニヤニヤ笑うシャロン。
想像でしかないけれど、それはきっと可愛いのだろう。
可愛かったと何度も言うシャロンの言葉に確信した。
「さあ、踊るわよ!」
「解ったから引っ張るなって」
ぐいぐいと腕を引っ張るシャロンに着いてフロアに出る。
少し離れた所にフレッドとアンジェリーナが居た。
とてもじゃないけれど近寄れない、とシャロンと顔を見合わせて笑う。
曲が終わるとほぼ同時に再び腕を引っ張られる。
何だ何だと思っている間にいつの間にか大広間から出ていた。
大広間よりも静かな廊下には出入りする生徒達が通る。
シャロンを見ると綺麗な笑顔で俺の身体を押す。
「名前の所に行ってらっしゃい」
「え?行きたいけど、シャロンは?」
「私は適当に相手見つけるから大丈夫よ。これでも誘われてたんだから」
ウインクしてもう一度俺の背中を押すとひらひら手を振る。
思わずシャロンを抱き締めると思い切り背中を叩かれた。
「早く行きなさい」
「うん、有難うシャロン」
手を振って急いでグリフィンドール塔へ戻る。
変に慎重になってしまって、物音を立てないように中へ進む。
ビルに会いたいと寂しそうに呟く名前の声に心が軋む音がした。
彼女は此処で一人、ビルを想っていたのだろう。
気が付いたら下に名前が居て、喉に杖先が当てられていた。
感情のままに押し倒して、情けないと思う。
弱っているところに付け込めばなんて一瞬でも思った自分を殴ってやりたい。
抱き締めるように名前の上に倒れ込んで顔をソファーに埋める。
情けなくて、名前の顔が見られそうにない。
「俺名前が好きだよ」
「うん…有難う」
それでも言いたくなって、抱き締めたくて、結局名前の優しさに甘えている。
(20130414)
寂しい夜