マルフォイ家の鷹では気付かれてしまう。
だから学校の梟を使って送ったのだが、とても不安だった。
朝食の時にちゃんと名前の手元に届いたので良かったが、あの梟はどうにも信用度が低い。
それもこれも同じように考えた生徒が学校の梟を使った為、残っていたのは余り人気のない梟ばかりだったからだ。
その中からまだマシだと思える梟を選んだつもりでもやっぱり不安なのは変わらず。

でもまあ、とにかくちゃんと手元に届いたのだから気にする事はない。
名前が嬉しそうに笑っているのも見れた事だし、満足だ。
自然と口角が上がるのを自覚しながらサラダを口に運ぶ。


「おはようドラコ!」

「ああ…おはよう」


せっかく良い気分だったのに、パーキンソンの猫撫で声が聞こえ、そして隣に座った。
別に嫌いでは無いし、パーキンソンは純血主義だから利用価値だってある。
でも名前の事に関してはあんな子がどうの私の方がどうのととにかく煩い。
確かに名前はグリフィンドールだし、マグル出身だから仲良くするなんて以ての外だ。
だけどどうしてか名前と居る時間をもっと増やしたいと思ってしまう。
ウィーズリーの双子が羨ましいと思った事も無いとは言えない。


「ねえ、今日はバレンタインね」

「そうだな」

「ドラコは、誰かに送ったりしたの?」


ピッタリと腕にくっついていつの間にか手元の皿には野菜が増えていた。
しかもポテトがハートの形に並んでいる。
もう直ぐ食べ終わるところだったと言うのに。
勿論私にくれるのよね?とパーキンソンの目が言っている。
皿をパーキンソンの前に置き、ゴブレットの紅茶を飲み干す。
そしてパーキンソンを引き剥がして立ち上がる。


「お前には関係無いだろう?僕はもう戻る」


パーキンソンは何か言いたそうに口を開いたが何も言葉は出て来なかった。
グリフィンドールのテーブルをチラリと見ると名前が双子に挟まれて座っている。
直接渡したのか名前の髪に髪飾りを付けて双子が杖を振った。
すると名前の腕の中は一瞬にして薔薇で一杯になる。
嬉しそうな名前の顔に先程は満足感を覚えたのに今は全く正反対の気分だった。
さっさと寮に戻って教科書や羊皮紙なんかを取りに行ってしまおう。




朝、あんな感情を持ちながらも自然と足は図書館へと向く。
きっと今日も名前は図書館のいつもの席で課題をやっているだろう。
談話室でやらないのかと聞いたら図書館が一番捗るのだと以前言っていた。
確かにグリフィンドールの談話室が静かそうな印象はない。
名前の居る席は奥にあって生徒もなかなか近付かないから更に静かだ。


適当な本を選んでいつもの席を目指す。
また今日も教科書に埋もれているのだろうか。
一生懸命なら邪魔しないようにしなければ。
送ったクッキーは食べただろうか。
あれはリラックス効果があるクッキーだから名前にはピッタリな筈。


そんな事を考えながら歩いていたら突然目の前に腕が現れた。
もういつもの席は直ぐそこだというのに邪魔者は誰だと腕の持ち主を見る。
ウィーズリーの双子のどちらかが、本棚に凭れた状態で立っていた。


「おい、邪魔をっ」


いきなり手で口を塞がれて、ウィーズリーは自分の口に立てた人差し指を当てる。
そしてそのまま後ろを指差したので手を振り払い、覗く。
やはりいつものように名前が傍らに本を積み上げて座っていた。
けれどいつものように羽根ペンを持ってはいない。
更に、積み上げられた本の一番上には名前の梟が居た。


「今は、邪魔するなよ」


小声で言ったウィーズリーを睨み付けてよく見ようと目を凝らす。
名前の手元にはやはり課題をやっていたのか羽根ペンやインク瓶が置かれているが、羊皮紙の上には小さな箱が置かれていた。
そして一枚のカードを手に持って見た事のない表情でそれを読んでは偶に梟を撫でている。
思わずウィーズリーを見ると此方もいつもと違う明るいとは言えない表情を浮かべていた。
ああ、あれは以前名前が言っていた憧れている人物から送られてきた物なのだろう。
そして、きっと名前は憧れとは違う感情も持っている気がした。




(20131101)
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