ぼんやりとテレビを眺めている名前を眺める。
今朝打ち明けたけれど、名前は何も変わらないように見えた。
もしかしたらそういう風に見たかっただけかもしれない。


突然テレビを消した名前が振り向いた。
目が合ったと思ったら直ぐに逸らされる。


「名前?」

「あのね、今日ずっと考えてたんだけど」


心臓がドキリと音を立てた。
今から名前が話そうとしているのは間違いなく今朝の事だろう。
嫌な訳じゃない、ただ名前の気持ちを知る勇気が出ないだけ。
でも、今名前が話そうとしているのならば、しっかり聞きたいとも思う


「今朝の、事?」

「うん。話しても大丈夫?」


深く息を吸って、吐いて、大丈夫だと告げると少しだけ名前の表情が和ぐ。
けれど直ぐに引き締めて真っ直ぐ此方を見つめる。
逸らしてしまいたくなるのは、まだ勇気が足りないせい。


「ビルは、帰れそうな気がしてるんだよね?」

「うん。直感だけど」

「私、ビルが元の世界へ帰れるのなら、嬉しい」


やっぱり、と何処かで安心している自分が居る。
名前はそう言うんじゃないかと、思っていた。
また何処か違う場所で残念がっている自分が居るのも確か。
思わず出そうになった離れ離れでも?という言葉を飲み込む。
そんな事を聞いたところで名前を困らせてしまうだけ。
膝の上で握られている一回り小さな手を掬い上げる。


「名前、有難う」

「私は…別に、何も」

「そんな事無いよ」


ぎゅっと握った手をもう片方の手で包み込む。
ただでさえ名前はこんなに怪しい存在を受け入れてくれた。
それだけで満足出来ていれば良かったのに。
でも、どうしようもなく愛しいと思ってしまった。
笑顔でいてくれるのならば、と。


繋いだ手を軽く引くと名前が倒れ込んでくる。
胸の位置にある名前の頭に頬を寄せた。
お互いに背中に腕を回すでもなく、そのままの状態で。
触れ合っている場所が温かくて涙が出そうだった。




(20140317)
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