日用品やビルさんの服、序でに食料品も買い込む。
全てを率先してビルさんが持ってくれるのが申し訳無い。
けれど持たせても貰えないので有難く甘える事にする。


買い物中も道中と同じようにキョロキョロしたり電化製品を物珍しそうに眺めていたり。
今も食料品をしまう私を不思議そうに眺めている。
もしかしたら、彼は電化製品を知らないんじゃないだろうか。
でも、そうだとすると普段どんな生活をしているのだろう。
やっぱり色々と不思議な部分がある人だ。


「ビルさん、夜ご飯何が良いですか?」

「あ、何でも良いです」

「嫌いな物とかありますか?」

「特には」


ふるふると首を振ったビルさんに待っててと伝えてキッチンに立つ。
彼は普段どんな物を食べているのか解らないから好みが解らない。
どういった味が好みかさっぱり解らない中でリクエストが無いのは少し困る。
イギリス料理って何があるのだろう、と考えてみるけれどさっぱり。
確かお米が主食では無い事だけは確かだ。
サンドイッチは朝兼昼で食べたから駄目だし、何か麺でも茹でよう。
お鍋に水を入れてコンロに乗せようとしたら隣から腕が伸びてきた。
代わりにコンロまで運んでくれて、お礼を言ってから火を点ける。


「名前さんは、マグル?」

「え?何、って言いました?」

「…いえ、何でも無いです」


マグル、という単語は全く聞いた事が無い。
私が知らないだけで外国ではメジャーな言葉なのだろうか。
パスタをお鍋に入れながら考えてみても解らない。
けれど、ビルさんはもう言おうとはしないし、気にしない事にしよう。


夕飯の片付けもやってくれて、時間が出来た私は少し仕事をする事にした。
急ぎでは無いけれど、こうしてやる気になった時にやるのが一番。
大体いつも集中してしまって最後まで仕上げてしまう事が多いのだけど。
今日もやはり案の定で気が付いたら短針が進んでいた。
ハッとして振り向くとソファーの前にビルさんが座っている。
どうしたら良いか、という顔をしていて慌てて謝った。


「集中してたから、邪魔しちゃいけないと思って」

「ああ、良かったのに…ごめんなさい」

「気にしないで下さい」


にこっと笑うビルさんに申し訳無い気持ちでいっぱいになる。
慌ててお風呂の準備をしてビルさんに先に入って貰う。
ソファーベッドを用意してからビルさんと交代でお風呂に入る。
お風呂上がりのビルさんに少しドキッとしたのは私だけの秘密。
かっこいい人というのは見ているだけで満足感が得られると思う。
部屋着というラフな格好に変わったのも影響しているのかもしれない。


お風呂から戻るとビルさんがソファーの前に座っていた。
ペットボトルを渡すと笑顔で受け取る。
最初に抱いた不信感がこの笑顔で消されていく。
それが良い事なのか悪い事なのか判断は出来ない。


「名前さん」

「はい?」

「どれ位の期間か解らないけど、宜しくお願いします」


改まってそう言われ、ビルさんの手が差し出される。
私も手を伸ばすとギュッと握られてまた笑顔になった。




(20130417)
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