クリスマスが終わればあっという間に年末がやって来る。
ビルに協力して貰って電球を変えたり高い所の掃除をしたり。
イギリスではクリスマスと一緒に新年の挨拶も済ませてしまうらしく、ビルは朝から色々な物に興味を持っては質問をするという行為を繰り返していた。
マフラーを巻き直し、そしてまたビルと手を繋ぐ。
お互いに手袋をしているけれど、家からずっと繋いだまま。
息は白くて吐く度にふわふわと消えていく。
雪は降っていなくても気温はかなり低いような気がする。
「毎年行くの?」
「行くけど、こんな夜中に行くのは久しぶり。ビルが居なかったらきっと家に居たよ」
「ふふふ、そっか」
にこにことしだしたビルにつられて私も顔の筋肉が緩む。
神社に近付くにつれて賑やかになっていく。
屋台も出ているし、既に初詣をしようとする人で列が出来ている。
とりあえずその列の一番後ろに並んで腕時計を見ると日付が変わるまであと僅か。
周りでカウントダウンが始まり、きょとんとしているビルに腕時計を見せた。
長針短針秒針全ての針が重なった瞬間、あちこちから声が上がる。
「ビル、明けましておめでとう御座います。また今年も宜しくね」
「新年おめでとう。此方こそ宜しく」
そう言って一瞬、本当に一瞬の触れるだけのキスをした。
周りに気付かれていないかと見渡したけれど皆新年の挨拶に夢中。
初詣はやり方を説明して、更に見様見真似で無事に終わった。
この神社はお餅が振る舞われていて、今ビルはお餅を前に固まっている。
割り箸だという事もあるだろうしお餅も初めて見たのかもしれない。
「一口で食べちゃ駄目だよ。喉に詰まるから」
「え?詰まる?」
「あ、大丈夫!ちゃんと噛めば詰まらないから」
サッと青くなったビルに慌ててそう言えば恐る恐る割り箸を握った。
お箸が上手く使えないビルは割り箸を割らずにそのままお餅に差して食べる。
一応喉に詰まらないか見ているけれど、今のところ大丈夫そうだ。
「これは…食べるのが大変かも」
「ふふ、つきたてだからね。どう?」
「うん、美味しいよ」
「良かった」
美味しいと言ってくれたならお雑煮でも大丈夫だろう。
ホッと胸を撫で下ろして私も割り箸を割る。
本当に久しぶりに来たけれど、一人だったらこんな年越しにはならなかっただろう。。
必死でお餅を噛むビルを見ながら心の中でお礼を言った。
(20140107)
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