12月に入るとテレビではイルミネーション特集ばかり。
クリスマス特集や早い番組では年越しの準備までも取り上げ始める。
リポートをしているアナウンサーが美味しそうにケーキを頬張っているのを眺めながら私は手帳を見て溜息を吐いた。
「忙しい?」
「うん、まあ、ね」
隣からビルが手帳を覗き込む。
書いてある言葉は日本語だから勿論ビルは読めない。
ただ書いてある量で解るらしく、苦笑いを浮かべた。
もう一度溜息を吐くとビルの手が頭を撫で始める。
その心地良さにずっと浸っていたいけれどそうもいかない。
とりあえず、一つでも多く終わらせてしまおう。
気合いを入れてパソコンに向かうと自然とテレビの音が消えた。
「じゃあ、僕は買い物行ってくるね」
「あ、うん。気を付けてね。何かあったらあの紙見せてよ?」
「大丈夫だって。行ってきます」
触れるだけのキスをするとビルは鞄片手に部屋から出て行く。
最近ビルは一人で買い物に行くようになっていた。
スーパー位なら大丈夫だからと散々説得され、以来食料調達はビルの役目になっている。
そして、何かあった時の為に此処の住所と私の携帯番号が書かれた紙を渡しておいた。
ビルはきっと何でもそつなくこなすだろうけれどやっぱり言葉の壁は心配の一つ。
玄関の扉が閉まる音を聞いて気持ちを切り替えようと大きく息を吐いた。
夕飯はビルが作ってくれたサンドイッチ、そして小腹が空いたらこれまたビルの作ったクッキー。
こうして仕事が忙しくなると家事の全てを任せっきりになってしまう。
私としても助かるからついつい甘えてしまうのだけど、やっぱり申し訳無い。
世の中のサラリーマンはこういう気持ちなんだろうか。
今日はもう切り上げようとパソコンから離れたのは日付が変わる寸前だった。
お風呂には入ったし、もうこのままソファーで寝てしまおうか。
寝室まで行くのも面倒だしそれが良いかもしれない、とソファーに座ると部屋の扉が開いた。
「あ、今日は終わり?」
「うん。また明日頑張ろうと思って」
「お疲れ様。部屋暖めたからソファーで寝ちゃ駄目だよ」
「…何で解ったの?」
「んー…何となく?ほら立って」
両手を掴まれたと思ったら軽く引かれ、立ち上がる。
そのまま歩き出したビルに付いていく。
部屋を暖めてくれたのならそれを無駄にする訳にはいかない。
部屋はビルの言った通り暖かくて、ベッドに入れば直ぐ眠れそうだった。
けれど暖房が入っている訳では無くて、魔法によるものなのかもしれない。
おやすみ、と言って部屋を出ようとするビルの手を掴む。
殆ど無意識だったのだけど、次に発する言葉は決まっていた。
「一緒に寝ようよ。せっかく部屋暖かいんだもん」
「でも、」
「ね?」
「…うん」
一緒にベッドに入ると、部屋の暖かさとビルの体温で直ぐに瞼が重たくなってくる。
ビルが頭を撫でるのを感じながらあっという間に意識を手離した。
(20131227)
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