「涼しいね」


そう言って笑ったビルが何だか綺麗で思わずシャッターを切った。
呆れたように笑ってビルの手が私の頭を撫でる。
少しだけ落ち着かなくなって慌てて背中を向けた。
気にしていないと言ったのにふとした瞬間にドギマギしてしまう。


「名前、これは冷蔵庫?」

「あ、うん、そう。今やる」

「僕がやるよ」


そう言ってビルは買い物袋を持って冷蔵庫前に行く。
私はその間に窓という窓を開けて回る。
レンタカーを借りて貸別荘に来るなんて初めての経験。
折角ならビルと出掛けようと仕事を頑張ったのだけど、道中のキラキラと輝く青色の瞳を見て頑張って良かったと思った。
冷蔵庫に向かっているビルの後ろ姿を見ると自然と頬が緩む。
特に何をしようとは計画していないけれど、ゆっくり決めるのも楽しいかもしれない。


「名前、お水飲む?」

「うん、飲む」


はい、と頬に冷たいペットボトルを当てられる。
冷たさに肩を竦ませるとビルは悪戯が成功した子供のように笑った。


「ビル、やりたい事ある?」

「うーん、何が良いかなぁ」

「温泉があるけど、きっと夜の方が良いよね」

「温泉…行きたい」

「今から?」

「うん。駄目、かな?」

「駄目じゃないよ」


じゃあ行こうか、と言った瞬間にビルが杖を振る。
魔法で窓を閉める程行きたいのかと思うと思わず笑ってしまう。
レンタカーに乗り込んでからもにこにこと嬉しそうだった。




すっかり温泉で寛いでしまって待たせてているかと思ったけれど、まだビルの姿は無い。
温泉での熱を冷まそうと扇子で扇ぎながらソファーに座る。
一応ビルには一通り教えたけれど、大丈夫だろうか。
何か起こっていないか、逆上せてしまったりしていないか心配が次々と出てくる。
そわそわと落ち着かなくなってきてしまって落ち着く為にソフトクリームを注文した。
受け取ってソファーへ行こうと振り向くとビルが此方に向かって歩いて来るのが見える。


「名前、待たせちゃった?」

「ううん。良かった、逆上せてたりしないかってちょっと心配だったんだけど」

「大丈夫。英語が話せる人が居て、逆上せない方法を教えてくれたんだ」

「そうなの?良かった」


その人らしき人が居たのか、ビルが英語で何か挨拶をした。
私以外と話していると英語に聞こえるのだと新しい発見。
ソフトクリームを舐めながら全く解らない会話を聞く。
ビルがとても楽しそうなのは久しぶりに私以外と話せたからだろう。


「あ、ソフトクリーム」

「ビルも食べる?買ってくるよ」

「僕はこれで良いよ」


買いに行こうとしていた私の腕が掴まれたと思ったら、ビルはパクリと食べかけのソフトクリームをかじった。


「あ、新しいの買うのに」

「ん?もう充分食べたから良いよ」


そう言ってビルはペロリと自分の唇を舐める。
そしてちょっと見てくると言って売店に行ってしまった。
仕方無く私はチビチビとソフトクリームを舐める。
甘い甘いソフトクリームは溶けるのが早い。




(20130820)
24
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -