休みだからといつもより遅く起きてベッドでゴロゴロしていた。
休みと言っても私は家で仕事をしているから仕事があれば休みじゃ無くなるのだけど。
とりあえず喉が渇いたし何かを飲もうとキッチンへ向かう途中、異変に気付いた。
ソファーから黒い靴を履いた足が飛び出している。
此処は私が一人で住んでいるからこれは明らかにおかしい。


深呼吸をして自分を落ち着かせると、足音を立てないように一度戻る。
些か心許ないけれど無いよりは良いだろう、と箒を掴む。
そろりそろりとソファーに近付いてソッと覗き込んだ。
其処に横になっていたのは外国人で、男の人なのに髪が長い。
顔立ちは整っているからきっとモテるだろう。
というか、外国人という事はもしかしたら言葉が通じないかもしれない。
英語は出来ないし、もしかしたらこの人は英語圏ではない可能性もある。


再び深呼吸をしてとりあえずこの人の靴を脱がす事にした。
もし危ない人なら目覚めて逃げてくれる場合は良いけれど、部屋を汚されるのは堪らない。
脱がせた靴を玄関に運びながらあれ?と首を捻る。
もしあの人が入ってきたのならば既に汚れている筈だ。
しかし、部屋も廊下も全く汚れていない。
それにこの靴は革に見えるけれど見た事の無い革だ。


首を捻りながら部屋に戻って本来の目的の為冷蔵庫を開ける。
ペットボトルの水を開けて一口飲むとほんの少し冷静になった。
という事は私は自分が思っている以上に混乱していたらしい。
ペットボトルを手にテーブルを挟んで向かい側に座る。
どうしよう、と溜息を吐くとソファーの上の人が動いた。
バッと箒を掴んで構えると開いた瞼の裏から青色の瞳が現れる。
起き上がって辺りを見渡した彼は私を見ると目を見開く。


「…貴女は、誰ですか?」

「え?あの、それ私が聞きたい、んですけど」

「ああ…僕はビル・ウィーズリーです」

「あ、名字名前です」


言葉が通じた事にホッとしつつ警戒は解けない。
ビル・ウィーズリーと名乗った彼もそれは同じ。


「どうして此処に居るんですか?」

「僕にも解らなくて、貴女はアジア系、ですよね?」

「アジア…あの、此処は日本です」


日本、と呟いて彼は黙り込んでしまった。
どうしたら良いかさっぱり解らない。
彼が怪しい事に変わりはないし、警戒を解ける訳もなく。
しかし胃が空腹を訴えているのも確かである。
そろそろ限界でもあるし、とりあえず朝食を作ろう。
そろそろ頭が働かなくなってきたし。


「あの、お腹空いてます?」

「え?」

「私お腹ペコペコで、何か作ろうと思うんですけど」

「あ、お腹は、空いてます、けど」

「じゃあ、待っていて下さい」


彼の返事を待たずに立ち上がりキッチンへと向かう。
お米もあるけれど彼は外国人だし、パンの方が良いだろうか。
冷蔵庫を見て野菜やチーズ等の材料を掻き集める。
サンドイッチを作り、インスタントスープにお湯を注ぐ。
お皿を持って振り向くといつの間にか彼が後ろに立っていた。


「あ、あの?」

「それ、運ぶんですよね。僕運びますよ」

「え、あ、じゃあお願いします」


彼はサンドイッチだけでなく続けてスープも運ぶ。
そのお陰で紅茶を淹れる時間が出来た。
そうは言ってもティーバッグなのだけど。
紅茶を持って行くと朝食の準備が完了する。


手を合わせていただきますと言うとサンドイッチにかぶりつく。
サンドイッチはとてもお手軽で野菜も食べられて良い物だ。
それに余り味に差が出ないのも良いところ。
勿論お店で食べる方が美味しいけれど。


「あ、聞かずに紅茶にしちゃったんですけど、紅茶嫌いだったりとかしますか?」

「いえ、好きです」


彼の返事に満足してまたサンドイッチにかぶりつく。




(20130402)
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