朝食を終えると名前はいつも仕事の為にパソコンに向かう。
それを確認すると洗濯をして食器を洗って掃除をしてから洗濯物を干す。
そして昼食のメニューを考えてそれを作って名前と一緒に食べる。
いつもならそうなる筈なのだけど、どうやら今日は忙しいらしい。
朝から変わらない体制でパソコンと向き合っている。


パンの上に野菜を乗せながらティーセットに魔法を掛けた。
氷の入ったグラスに紅茶を注いでサンドイッチと一緒に持っていく。
いつものテーブルではなく、パソコンのデスクの方へ。


「少し休憩したら?」

「え?あ、こんな時間?」


時計を見て驚いている名前の前にサンドイッチと紅茶を置く。
有難うと言ってサンドイッチをかじった名前は嬉しそうに笑った。
名前は食べる事が好きで、美味しい物を食べるといつも笑う。
この顔を見ると此方も自然と笑顔になれる。
食べながらも仕事を続ける名前の邪魔にならないように、ソファーへと座った。
自分の分のサンドイッチをかじりながら名前の背中を眺める。
カラン、とグラスの中の氷が音を立てた。


夕食に作ったコンソメスープとパスタを名前はまた仕事をしながら食べる。
やはり邪魔にならないようにソファーで食べるけれど、少し味気無い。
誤魔化すように流し込んで空になった名前の皿も回収してキッチンへと運ぶ。


片付けも終わっていつものように辞典を手に取った。
いつもはこの時間は名前とテレビを見ている。
けれど今名前は仕事中で、パソコンと向かい合っていて背中しか見えない。
仕方無いのだと言い聞かせて辞典を捲った。




ぼんやりと思考が持ち上がって、自分が寝ていたのだと気付く。
今は何時なのだろうと時計を見ると名前の姿が無い。
カチャン、と音が聞こえて出所を探るとキッチンに名前が立っていた。


「あ、起こしちゃった?」

「ううん、そうじゃないよ。飲み物なら僕が淹れるよ」

「あ、良いの。ちょっと休憩してただけだから。それにお茶あるし」


作り置きのお茶が入ったグラスを持ち上げて名前が言う。
パソコンを見ると相変わらずの画面で、まだ仕事中らしい。
時計を見るともう日付が変わって二時間経っていた。


「名前、まだ仕事するの?」

「うん。早く終わらせたいからね」

「無理しないでね」

「大丈夫。先に寝てて」


ひらひら、と手を振った名前はまたパソコンへと向かい合う。
心配だけど邪魔をする訳にはいかないし、おやすみと言って部屋を出た。




うんと背伸びをして頭を覚醒させる。
朝食を作って名前を起こして、と考えながら進む。
リビングを通ろうとして思わず立ち止まった。
名前がソファーの上で眠っている。
パソコンは閉じられていて空になったグラスが側に置かれていた。


「名前?」


声を掛けてもよく眠っているらしく、瞼が開く様子は無い。
名前は一体何時まで起きていたのだろう。
起こさないように抱き上げて部屋へと運ぶ。
ベッドに寝かせて風を入れる為に窓を開ける。
それから名前に薄い布団を掛けて髪の毛を払った。
起きたら直ぐに何か食べられるようにしておこうと決めて立ち上がる。
今日はどうやら風が強いらしく、真っ直ぐ風が抜けていく。


辞典と睨めっこをしながら日本食でも作ってみようか。
きっと名前は日本食の方が喜んでくれるだろう。




(20130711)
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