まだまだ太陽が踏ん張っている時間帯の赤い教室。
机と仲良しな私は日直日誌を書けずにいた。
大体一日の感想を20行書けなんて無理な話。
やる気の無さそうな担任に軽く恨みを覚える。
それでもやっぱりどちらかというと好きで、今こうして誰もいない教室で考えている訳だけど。


「でも無理」


なんとか頑張って18行は気合いで書いた。
残りの2行がどうしても書けない。
そして机に突っ伏して今に至る訳で。
遠くからは部活をやる生徒の賑やかな声。
日直じゃなければ私だって混ざれたのに。


「お前、何やってんの?」


ガタッという音と共に聞こえたのは低い声。
扉に目を向ければなんとも端正な顔立ちの土方くん。
目で追っていくと私の前の席に横向きに座った。
なんていうかあの、近いんですけど!


「あぁ、日直か」


日誌を覗く黒い瞳はよく見えないけど、でもなんていうかこの距離は心臓に悪い。
恋とか愛とか、そういう感情はなかったとしても、流石に端正な顔が目の前にあるだけで駄目。
ドキドキしてしまう私の心は正常に動いてくれない。


「あ、あの、そうだ土方くん一日の感想書くの手伝って」

「書けてるじゃねえか」

「2行!2行足りないの!たった2行されど2行!」

「頑張れ」


そう言いながらもまだ此処に居るらしい彼は、手にしていた本を開くから覗いてみる。
背表紙にはマヨネーズ料理と書かれていて、作るのかな、と顔をチラッと見れば目が合った。


「2行だろ?」

「うん」

「じゃあ、教室で土方くんと仲良くお喋りして土方くんの家で一緒にマヨネーズ料理を食べて告白されましたで良いじゃねえか」


言葉が素通りして意味がよく理解出来ない。
ゆっくり理解していく度に体温が上がっていく。
土方くんは横を向いてしまったけれど、私と同じ様に耳まで真っ赤になっていた。


「冗談だ」


ふわ、っと笑った横顔は綺麗で見取れてしまって、気付いた時には土方くんは教室の扉の所にいて、下で待っているという言葉を残して土方くんは消える。
慌てて残りの2行を書き上げると職員室へと走った。


「お待たせ土方くん」

「おう」


門に寄りかかる様に立っていた土方くんと並ぶ。
いつもよりも近い、と怒られてしまった。
自分はあんなに近付いて来るのになんだか狡い。


「土方くん私に告白するんでしょう?」


そう言えば顔を真っ赤にしてそっぽ向かれてしまった。
それにつられて私の顔もきっと同じ色に染まっているはず。



やっぱり、土方くんは狡い。




(20070719)
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